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 ■建築家・伊東豊雄

 今年の正月明け、事務所で「今同じ条件であのコンペがあったら、僕らは勝てるだろうか」と問いかけました。僕は「絶対に負けると思う」と言いました。今の僕らには、あんな大胆な提案はできなくなってるなあ、と思って。

 《1995年、仙台市の「せんだいメディアテーク」のコンペ(設計競技)では、ギャラリーや図書館、映像メディアセンターが入る、電子メディア時代の文化施設像が求められた。メディアテークの名称は、コンペの審査委員長、建築家・磯崎新さんの提案で、メディアの器といった意味だ》

 メディアテークという新しい建築様式を問うもので、こんなコンペはもう二度とないだろう、と思えるほど自由に建築を考えることができました。ぜひこの建築を実現させてみたい、と思いましたね。

 《1月23日、四角い建物の中で海草のような柱が揺らめく、伝説的なスケッチが描かれた》

 英国出張のために空港に向かう成田エクスプレスの中で描きました。僕の中では、電子メディアと水のイメージは、世界や情報をつなぐという意味で重なっていました。だから、水中で海草がゆらゆらしているイメージ。天井から光の注ぐチューブが柱になったら面白い、と考えました。チューブの中には光や空気が通り、階段やエレベーターも収める。

 このスケッチをFAXで事務所に送ったんです。所員たちも、これ以上のものはないと受け止めてくれて、一気に進みました。

 1週間後に帰国すると、構造設計をお願いしていた佐々木睦朗さんが、僕のスケッチに興奮して描き込んだ図面が届いていました。

 光に満たされたチューブが、フラットな床を支えているイメージが模型になり、自分でもこれしかないと思いました。

 《応募235案のうち3案の設計者がインタビューを受け、3月22日に最優秀に選ばれた》

 事前にほかの案を見て、もう絶対に勝つぐらい自信満々でした。(聞き手 編集委員・大西若人)

 <訂正して、おわびします>

 ▼15日付文化・文芸面の「語る―人生の贈りもの―」で、「メディアテークは、コンペの審査委員長、建築家・磯崎新さんの造語」としたのは「メディアテークの名称は、コンペの審査委員長、建築家・磯崎新さんの提案」の誤りでした。聞き手が執筆する際、確認が不十分でした。

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