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 コロナ禍はいまや地球を覆う災厄である。ところが、この深刻な危機との闘いを牽引(けんいん)するリーダー役の国がいない。

 その憂いをいっそう深める暴挙というべきだ。米国のトランプ政権が、医療対策の一線に立つ世界保健機関(WHO)への拠出金を止めると発表した。

 理由は「あまりに中国中心だからだ」という。折からの中国との覇権争いに加え、米国が最大の感染国になった責任を転嫁したい思惑が透けて見える。

 中国政府も「米国は責任を果たせ」と反論し、矛先は欧州にも向けて感染拡大の非をあげつらう様相だ。この状況下で大国同士が醜い言い争いを続ける事態はあまりに不毛だ。

 近年まで米中両国は、感染症対策での協調の大切さを学んできたはずだった。02年からの新型肺炎SARSの際、初動で出遅れた中国に、米国は専門家を派遣して支えた。

 ところが今回は米政府内ですら体制づくりが遅れた。一方の中国も当初は米国の専門家の受け入れを断るなど対外的に開かれた対応をしたとは言い難い。

 WHOのテドロス事務局長も、中国の施策の成果が見えない段階で露骨に称賛するなど、中立性を疑わせる発言があったのは確かだ。WHOの初動や、その後の対応は適切だったか、国際社会による検証はいずれかの段階で必要だろう。

 しかし、大口の資金源である米国が今、拠出を止めれば、今後の途上国での対応や、治療薬・ワクチンに関する調整を担う現場の足を引っ張りかねない。「米国第一」を掲げて多くの人命を危険にさらす措置は、撤回すべきである。

 中国も、改めるべき振るまいがある。まずは、台湾に対する排除の動きだ。台湾は中国の圧力でWHOへの加盟を果たせずにきたが、今では総会でのオブザーバーの資格も奪われた。

 感染症対策では、空白地帯をつくれば結局は、問題を長引かせてしまう。台湾の人びとの人道問題を、政治の具にしてはならない。

 中国政府は最近、マスクを各国に提供するなど支援外交を展開している。物資の貢献もいいが、国際社会が最も望むのは、感染症をめぐる情報開示だ。内外から隠蔽(いんぺい)が疑われる現状を改善しなければ、「責任ある大国」とは言えない。

 こうした問題のさなかにも、中国軍は空母を巡回させるなど西太平洋全域で示威行動を続けている。感染症の脅威にどの国も等しく直面する今こそ、軍拡の無益さを認識すべきではないか。それは、米国も同様に学ぶべき現実であろう。時代錯誤の覇権争いに堕する時ではない。

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