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 京都府最北端の集落、京丹後市袖志(そでし)地区。春先は高齢化した農家にとってつらい季節だった。

 米軍通信所を見下ろすように、山の斜面に約400枚の棚田が広がる。総延長約2キロもある用水路の草刈りや掃除などの重労働が待っていたからだ。

 前区長の松下敏(さとし)(65)は話す。

 「ここは置いてけぼりの地区。要望がなかなか実現しない。ところが水路整備は、基地ができるとあっという間に解決した」

 袖志の水路は4年前、防衛省の米軍再編交付金で地中化され農家は苦役から解放された。そればかりか漁港の浚渫(しゅんせつ)、防波堤の改修、鳥獣害防止柵の設置、集会所建設などの懸案も次々と片づいた。

 米軍との交流も盛んだ。住民向けの英会話教室や海岸清掃などが定着。2年前の台風被害で集落の河川が氾濫(はんらん)し土砂や岩が家屋内や道路上にあふれ出たが、20人近くの米軍人が迷彩服姿で駆けつけて復旧作業を手伝った。

 「米軍を敬遠する人がいるが、ここに来たのは北朝鮮のせい。文句を言う相手が違う。米軍とは共存共栄でいきたい」

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 美しい砂浜で知られる同市網野町の春日神社には、2基の豪華な神輿(みこし)がある。地域の高齢化で担ぎ手が減り、10月の秋祭りでは長く飾られるだけの存在だった。

 「軍属の方に頼んではどうか」

 軍属とは、通信所で働く米国人の民間警備員約70人のこと。町内に宿舎があり、ふだんは小銃をもって通信所内を巡回している。

 昨年秋、地元区長の谷口喜久治(72)が呼びかけた。全員が年額1万2千円の区費を納める区民でもある。すると約10人の米国人が応じた。大型神輿が町内を練り歩き祭りは盛り上がった。

 「こっちは人手がほしい。向こうは交流がしたい。不安が消えたわけではないが、顔見知りになって接点ができればトラブルは起きないはず」と谷口は話す。

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 再編交付金は、基地負担が増す自治体に防衛省が支払う国庫支出金。同市には2014年から5年間で約32億円が交付された。

 年間の市税が約50億円の市財政にとって「恩恵は大きい」と市長の三崎政直(まさなお)(68)は評価する。同市は交付金の一部を事業基金として蓄え、既に教育や健康、産業振興などの約70事業にあてた。

 「財政が厳しく十分に地元の要望に応えられない中で、米軍基地ができた。基地の負担が大きい地域を中心に、過疎化の歯止めなどに役立つ事業ができ、財政面では非常に大きい」と話す。

 防衛省には、これとは別に基地周辺対策として民生安定事業と呼ぶ補助制度もある。同省単独で、他省庁より高い補助率で道路や農業基盤の整備が行える。とりわけ力点を置くのが道路事業だ。

 同省の近畿中部防衛局長、桝賀政浩(ますがまさひろ)(58)は「ここは道が狭い上に急カーブも多く道路事情が悪い。基地建設や米軍関係者の車両の往来が増えることもあり、道路事業に力を入れた」と話す。

 国道のバイパス事業、府市道の拡幅など道路事業だけですでに14億円が投じられた。農業用水の整備も進む。桝賀は言う。

 「基地がからめば、私たちには小さな街づくりができる。今後もいろんな事業で振興を図りたい」

 =敬称略(谷田邦一)

 <訂正して、おわびします>

 ▼4月27日付NEWS+α面「現場へ!米本土防衛の最前線・京都(1)」の記事と写真説明で、中山泰氏の肩書が京丹後市の「市長」とあるのは「前市長」の誤りでした。また同月30日付の「(3)」の記事と写真説明で、三崎政直氏の肩書を「前市長」としたのは「市長」の誤りでした。同月26日の市長選で中山前市長が三崎市長らを破り当選しましたが、三崎氏の任期満了は5月15日でした。確認が不十分でした。

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