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 政府は、すべての都道府県を対象とする緊急事態宣言を、今月末まで延長すると決めた。感染が抑えられている地域では行動制限の一部緩和や期限前の宣言解除も検討するというが、市民の自由と権利が制約される状況はなお続くことになった。

 「遅すぎ、少なすぎる」との批判が絶えないこれまでの施策を練り直し、人々の命とくらしを守り通す責務が、政府にはある。あわせて、社会経済活動をどうやって元の状態に戻してゆくか、有効な戦略を立て、具体的なデータを示して国民に説明し、認識を共有するよう努めなければならない。

 休業要請などによって収入の大幅減や雇用不安に直面する人への支援とともに、医療態勢の充実は引き続き最重要課題だ。

 新たな感染者は減少傾向にある。だがPCR検査の実施件数は首相の説明通りには増えず、感染の全体像を把握しているわけではないことは、政府の専門家会議も認める。これでは出口戦略の描きようがなく、政府への不信を拭うこともできない。

 防護服やマスク、人工呼吸器などの不足も依然解消されていない。重症者向けのベッドの確保、そのためのホテルなどを利用した宿泊療養態勢の整備・充実、医療機関や保健所で働く人たちの心身のケア――。

 補正予算に医療支援のための交付金1490億円が計上されたが、不足を指摘する声は強い。医療が崩壊すれば社会の再生は望めない。早め早めに次の対策を講じる必要がある。

 ウイルスの厄介な性質を改めて感じさせるのが、専門家会議が提唱した「新しい生活様式」だ。新規感染者が限定的になった地域向けのものだというが、多くの人が「今は緊急事態だから」と受け入れている制約や留意事項がそのまま盛り込まれた。政権が掲げる「V字回復」の難しさを物語る内容だ。

 感染の拡大と縮小、行動制限の強化と緩和が、当分の間繰り返されそうなことが、はっきりしてきている。現在の宣言を解除できる状態にもっていくだけでなく、「その後」も見すえ、長期的視点に立った構想を準備することが欠かせない。

 医学や医療の関係者を中心とする専門家会議や、ほとんどメンバーが重なる現在の諮問委員会で対応できる話ではない。より幅広い専門知を結集させ、想定される様々な展開に堪える議論を進めるべきだ。

 きのうの会見で首相からは、ウイルスとの闘いが長丁場になることを念頭においた政策プランはほとんど語られなかった。考えたくない事態も考え、転ばぬ先の杖で手を打っていくのが政治の務めのはずだ。

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