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 新型コロナウイルス感染がピークを過ぎた国々では、日常生活が徐々に再開され始めた。感染の「第2波」を招かぬよう、手探りの作業である。

 経済や社会を立て直す際、忘れてならないことがほかにもある。単に元通りに戻すことだけを考えていると、気候危機の回避が難しくなるという点だ。

 地球温暖化が深刻化すれば、世界はコロナ禍と同様に重大な危機に直面する。そのことを肝に銘じておかねばならない。

 いま、温室効果ガスの排出量は、人やモノの動きが地球規模で抑えられたため大きく減っている。国際エネルギー機関(IEA)は先月末、世界の二酸化炭素排出量が今年は昨年に比べて8%も減ると予測した。

 しかし、これを手放しで歓迎することはできない。

 2008年のリーマン・ショックの直後にも排出量が減ったが、景気回復にともなって増えて短期間で元通りになってしまった。その後、過去最高を更新した経緯がある。

 今回の経済へのマイナスの影響はリーマン・ショック時よりも大きい。IEAはエネルギー需要の落ち込みが、当時の7倍に上るとみている。その分、景気回復にともなう排出増の反動も強くなる恐れがある。

 先日、日本や独英中ロなど約30カ国の閣僚らがオンラインで対話し、環境に配慮した経済復興が重要であるという認識を共有した。ウイルスと同じく温室効果ガスに国境はなく、各国が足並みをそろえることは大いに意味がある。

 気がかりなのは、気候危機回避に向けた国際社会の意欲が薄れていないか、という点だ。11月に予定されていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が来年に延期され、国際交渉が停滞する懸念もある。温暖化対策の国際ルール・パリ協定の取り組みが、ここで足踏みしては困る。

 そもそも各国が現在の排出削減の目標を達成できても、産業革命前からの気温上昇は今世紀末に、パリ協定がめざす「2度未満、できれば1・5度」を上回り、3度を超えてしまう。すでに頻発している異常気象や自然災害が深刻化し、新たな感染症が広がる恐れもある。一刻の猶予もない、という厳しい現実を再認識するべきだ。

 脱化石燃料の方針を堅持し、再生可能エネルギーへの投資を思い切って広げる。デジタル技術の活用などで働き方や暮らし方を低炭素型に変える――。コロナ禍からの復興を機に気候危機対策を加速させていくことこそ、進むべき道である。

 地球規模の危機回避へ、文明の持続可能性が問われている。

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