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 新型コロナ禍が長引くなか、感染症による死者だけでなく、経済的・精神的に「追い込まれた末の死」の増加が危ぶまれている。政府と自治体は日々の生活を支える迅速で効果的な資金給付とともに、心のケア対策にも万全を期さねばならない。

 自殺防止のための相談窓口には悲痛な声が相次ぐ。

 「不安で外に出られず、働くこともできない」(50代男性)

 「収入減を証明できず、支援を受けられない。(介護している)母親を殺して自分も死ぬしかない」(50代女性)

 「せっかく決まった仕事がコロナでなくなった。将来が見えない」(20代女性)――。

 こうした訴えを受け止める側も窮地に立つ。厚生労働相の指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が4月下旬、全国70団体に行った緊急アンケートによると、回答した55団体のうち8割が活動を休止、あるいは制限していた。相談員が詰める場所の3密を解消するのが難しく、行政側から自粛を要請されたところもあった。

 アンケートでは、窓口の維持や再開に向け、拠点の確保策とあわせて、自宅で相談に応じる際の機材や技術面のサポートを求める声が目立つ。規模の小さな団体は電話の転送費用だけでも大きな負担だという。行政は手当てを急いでほしい。

 警察庁が発表した4月の自殺者数(速報)は1455人で、前年に比べ2割減った。社会全体が緊張状態にあることや、人との接触やトラブルが一時的に減ったことが背景にあるようだが、緊急事態宣言によって心身に刻まれたダメージが顕在化するのはこれからだ。緊張感をもって備える必要がある。

 そもそも日本の自殺をめぐる状況は、先進国の中で最も深刻とされる。前年来の金融危機をうけて98年に自殺者が急増し、以後長いこと年間3万人台で推移。法整備をはじめとする種々の取り組みと経済の回復があいまって、この10年間は減少傾向が続くが、それでもなお年に2万人超が自ら命を絶つ。

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が3月に成立した際、国会は付帯決議で、万全の自殺対策を講ずるよう政府に求め、先の補正予算には相談体制の強化費が盛り込まれた。有効な活用が求められる。

 借金や失業、家庭内の不和は、自殺リスクを高める主な要因と指摘される。とりわけ個人事業主は仕事が人生そのものという人が少なくなく、長年かけて築きあげた会社や取引先を失うことの精神的苦痛は甚大だ。

 官民で力を結集して、「コロナ関連死」ともいうべき悲劇を起こさせないようにしたい。