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 もともと勉強ができてスポーツができて、という模範的な子どもではなかったですね。みんなが当たり前のようにできることができなかった。

 分数の割り算で、(分母と分子を)ひっくり返すでしょ。意味がわからんくて。バスケットボールを何回やっても、3歩以上歩いてしまうとかね。当時は「なんでできないんだろう」とすごく考えました。「いじめられたくない」とおびえながら、学校生活を送るわけです。

 中学3年の時にギターを始めました。弾けたらモテんのちゃうかな、と思って。だんだん、ギターを弾くことから、ギターを使って曲を作ることにシフトしました。自分にしか見えていないものを取り出して、作品にする。「自分にしかできないことがある」と感じられたのは、すごく大きいことでした。

 大学生になって「くるり」を結成しましたが、当時は気楽な時代だったと思いますね。日雇いのバイトでもしながらバンドを続けられれば、ぐらいしか考えてませんでした。

 バンドの曲作りは、仲間とわいわいやることが全て。長く続けるなかでメンバーも状況も変わりましたが、同じ場や材料で盛り上がり、躍り食いのような早いかけ合いがあると曲作りはうまくいくんです。

 新型コロナウイルスの影響で、ライブツアーも中止になりました。ワクチンができて「自粛しなくていい」となった時、元通りにできるか。以前のようなコンサートはできないんじゃないかと思います。ただ、音楽を受け取る人は必ずいる。そこはなくならないはずです。個人の何かを豊かにする、自分自身を見つめ直すという音楽の役割は変わるものじゃないと思う。

 10代の人たちは、本来謳歌(おうか)できるはずの色々な自由が奪われていますが、この状況がずっと続くわけではない。感染が終息したとき、今までと違う世界になっている可能性があります。いまの暮らしで思いついたことを、その後の生活に生かしてほしい。(聞き手・根岸拓朗)

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 きしだ・しげる ミュージシャン 1976年、京都市出身。96年にバンド「くるり」を結成し、ボーカル、ギターを務める。4月に新作アルバム「thaw」を配信(CD発売は5月27日)。写真はノイズ・マッカートニー提供

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