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 東京高検の黒川弘務(ひろむ)検事長が辞表を提出した。コロナ禍で外出自粛が求められているさなかに、産経新聞記者の自宅で賭けマージャンをしたと週刊文春が報じ、法務省の聞き取りに氏も事実を認めたという。

 公訴権をほぼ独占し、法を執行する検察官として厳しい非難に値する。辞職は当然だ。

 マージャンには、記者時代に黒川氏を取材した朝日新聞社員も参加していた。本日付の朝刊にこれまでの調査の概要を掲載し、おわびした。社員の行いも黒川氏同様、社会の理解を得られるものでは到底なく、小欄としても同じ社内で仕事をする一員として、こうべを垂れ、戒めとしたい。

 そのうえで、今年1月以降、黒川氏の処遇をめぐって持ちあがった数々の問題や疑念が、この不祥事によってうやむやにされたり、後景に追いやられたりすることのないよう、安倍政権の動きを引き続き監視し、主張すべきは主張していく。

 黒川氏は検察庁法の定年規定により、2月に退官するはずだった。しかし政府は直前の1月末、留任させる旨の閣議決定をした。かつて例のない措置で、国家公務員法の定年延長規定を適用したと説明された。

 ところが政府自身が過去に国会で、この規定は検察官には適用されないと答弁していたことが発覚。すると首相は「今般、(適用可能と)解釈することとした」と驚くべき発言をした。

 国民の代表が定めた法律がどうあろうと、時の政府の意向次第で何とでもできると言明したに等しい。法の支配の何たるかを理解しない政権の体質と、国会を冒涜(ぼうとく)する行為を見逃す与党の機能不全。その両方があらわになった場面だった。

 政権はさらに、検察幹部が役職定年や定年の年齢になっても、内閣や法相の判断で留任できるようにする検察庁法改正案を国会に提出した。黒川氏の定年延長を後づけで正当化し、それを制度化することによって検察人事への恣意(しい)的介入に道を開くものだ。無法がさらなる無法を呼んだと言うほかない。

 世論の批判をうけて法案の今国会成立は見送りが決まり、続けて混迷の「出発点」となった黒川氏が職を辞す。内閣の政治責任は極めて重い。

 1月の閣議決定をさかのぼって取り消し、検察庁法改正案は撤回する。事態の収拾にはこの二つと経緯の説明が不可欠だ。

 首相はきのう、黒川氏の定年を延長したことについて、「総理大臣として当然責任がある」と記者団に述べた。問われているのはその責任の取り方だ。これまでのように口先だけで済ませるわけにはいかない。

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