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 新型コロナウイルスとの闘いにおいて優れているのは、どのような政治体制なのか。

 権威主義体制による強権的な封じ込めが効果的だという主張がある一方、民主的で透明性のある対策が成功を収めたとするケースもある。

 国ごとの固有の事情にもより、結論を出すのは容易ではない。ただ、民主社会の典型例として、台湾の試みは注目に値する。国際社会が共有すべき貴重な経験として考えたい。

 20日に台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統が2期目の就任式に臨んだ。1月の選挙で大勝した後、コロナ対策が評価され、支持率は歴代総統トップの70%超に上っている。

 中国で感染発生が伝えられた初期の段階で、大陸との往来を即座に遮断したのが効果的だったといわれる。新型肺炎SARSの教訓も大きかった。厳格な隔離や医療物資の生産を、当局主導で速やかに進めた。

 その上で際立ったのは、強制的な措置と同時に進められた積極的な情報公開だ。

 衛生当局トップの連日の記者会見やITの駆使により、政策の全体像、目的を社会全体で共有するよう努めた。こうした民主的な手法が市民の自立的な行動につながったとされる。人口約2400万人で、感染者数441人、死者は7人にとどまっている。

 これに対し、一党支配の中国は号令一声で大都市を封鎖し、人々の行動の自由を一気に凍結した。異論を排する言論統制は混乱を封じ込めたが、その間に当局の情報隠蔽(いんぺい)が進められ、対応の遅れや統計への不信につながったとも指摘される。

 イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は「数百万人に手洗いを徹底させたい場合、人々に信頼できる情報を与えて教育する方が、すべてのトイレに警察官とカメラを配置するより簡単」だとし、民主主義社会の強さを説く。

 政府が政策を間違えた場合、民主社会では自由な報道などで政策変更が行われやすいが、独裁体制では政府が誤りを認めること自体、難しくなる。

 世界保健機関(WHO)総会では今年も、未加盟である台湾のオブザーバー参加が中国の圧力で認められなかった。国際社会が台湾の経験を十分に共有できないならば、大きな損失である。中国は台湾との政治問題を感染症対策の分野に持ち込む、反人道的な行為をただちにやめなくてはならない。

 蔡氏は再任の演説で「我々は民主・自由の価値観を常に堅持してきた」と訴えた。その共通の原則を掲げる主要国として、日本は台湾社会の強さに学び、尊重していくべきだろう。

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