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 政令指定市を解体しようという大きな試みである。住民と直接向き合い、さまざまな声を聞く場を大切にすることが、首長としての務めではないか。

 大阪市を廃止し、東京23区と同様の特別区四つに再編する都構想について、構想を推進する松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事らが出席を予定していた公聴会が、コロナ禍をきっかけにとりやめになった。一方、住民投票については、感染拡大がひとまず落ち着いた現状を踏まえ、予定通り11月に実施できるとの認識を松井氏が示した。

 公聴会はもともと、新たに設ける4区ごとに、それぞれ300人規模の住民を募って4月上旬から開く予定だった。しかしコロナ禍を受け、規模を4分の1に縮小して5月中旬の2回に変更。その開催も大型連休前の4月末、早々に中止になった。

 緊急事態宣言は既に解かれ、府の休業要請も6月からは全面解除される。再流行への注意は不可欠だが、ネットの活用などやりようはあるはずだ。代替策として松井、吉村両氏と各党代表者の見解を紹介する動画が公開され、住民の意見を受け付けているが、十分とは思えない。

 昨年春、両氏が府知事と市長のポストを入れ替えて立った「クロス選挙」で維新は圧勝し、府と市の議会選挙でも議席を増やした。都構想の是非が争点だっただけに、維新など推進派には「住民の賛否は決している」との空気も漂う。

 しかし5年前の住民投票で否決され、構想を引っ張った橋下徹氏が政界から引退した経緯を軽視してはなるまい。

 当時の5区制を4区に改め、区ごとの人口や税収の格差を縮めたとはいえ、行政サービスや負担がどうなるのか、市民の不安や疑問は消えていない。新設する区の庁舎問題はその一例だろう。現在の大阪市役所に新・北区が入るが、経費を抑えるため、隣接する区の一部職員も常駐する計画がある。防災対応を不安視する声や、職員が他区にいて自治と言えるのかといった指摘が出ている。

 住民投票にも課題がある。投票権は日本国籍を持つ人に限られているが、大阪市に住む外国人の比率は5%強で全国平均の2倍を超える。海外からの訪問客呼び込みに力を注ぎ、万博も開催する自治体として、外国人を投票から除くことが適切なのか。賛否を呼びかける活動は費用の制限がないなど自由度が高い。資金力のある政党が有利になる問題は残されたままだ。

 一部住民からは、コロナ禍を踏まえ、投票を延期するよう求める陳情書も出された。多様な声に丁寧に耳を傾ける姿勢が問われている。

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