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 日本原子力発電(原電)がめざす東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働の是非を問う県民投票条例の制定が、市民団体によって茨城県知事に直接請求された。必要な法定数の約1・8倍の署名が集まった事実を、知事や県議会は重く受け止める必要がある。

 2011年の東京電力福島第一原発の事故の後、国内では5原発9基が再稼働した。必要な「地元了解」はいずれも、立地する市町と県のトップが判断してきた。

 一方、再稼働に当たって地元住民の声を広く聞いてほしいと、静岡、新潟、宮城3県で県民投票を直接請求する動きが続いたが、いずれも県議会が否決した。茨城で条例が成立すれば、都道府県レベルで初めて、原発について住民が直接、意思表示する機会が生まれる。

 原発で万一、事故が起きれば、長く広範囲にわたり、人々の生活を大きく変えることを、福島の事故は示した。だからこそ、原発の再稼働の是非は、県民全体で考えるにふさわしいテーマだ。

 東海第二原発は、民意を直接探るべき特別な事情がある。事故に備えて避難計画を策定することになっている30キロ圏内には、国内最多の約94万人が住む。東海村では2人が死亡する臨界事故が起きたこともあり、周辺5市の同意も得るとした協定が18年に結ばれた。

 この「茨城方式」は国内で唯一、事実上の「同意権」を周辺自治体に拡大したと評価されるが、全6市村の意見を集約する方法は確立していない。県民投票は、地元の意向を確認する一助になるだろう。

 17年に初当選した大井川和彦知事は選挙中、再稼働について判断する際には県民の意見を聴く方法を検討すると表明し、その後も同様の発言を繰り返していた。県議会に提出する条例案に付ける意見では、その姿勢を維持しつつ、条例案が広く受け入れられる内容になるようリーダーシップを発揮してほしい。

 県議会も、民意が明らかになる機会をつくることを、前向きにとらえるべきだ。

 そもそも住民投票は、首長や議会と対立するものではない。有権者が選挙で選んだ首長や議員が地方自治を担うのが、間接民主主義の基本ではある。しかし選挙の機会は数年に1度しかなく、特定の問題について政治と民意が乖離(かいり)することはしばしばある。住民投票はそのすき間を埋め、間接民主主義を補うしくみになり得る。

 民意を大事にした原発政策を形づくるために、望ましい方法を探っていく。茨城で新たな道が開かれることを期待したい。

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