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 北朝鮮が韓国に強硬姿勢を強めている。非難にとどまらず、南北間のすべての通信手段を遮断すると今週、宣言した。

 偶発的な軍事衝突を防ぐうえでも、ホットラインは重要だ。国際社会がコロナ禍の収束に向けて努力を続けるなか、無用な緊張を高める挑発行為はただちにやめるべきである。

 北朝鮮は、韓国の脱北者団体による宣伝活動を問題視している。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長を批判するビラを風船で飛ばしたことに反発した。

 韓国側がやめさせなければ、北朝鮮側にある南北共同連絡事務所を閉鎖し、軍事境界線付近で敵対行為をしないとする合意も破棄すると示唆した。

 ただ、強腰にもみえる姿勢の裏には別の意図が見て取れる。米国との関係を含めた八方ふさがりのなかで、北朝鮮国内を引き締めたい思惑である。

 2年前のきょう、米朝は初の首脳会談を開き、安定的な平和体制づくりに努めるなどとする共同声明を出した。しかし、その後の進展はなく、米朝対話の機運はすっかりしぼんだ。

 北朝鮮が望む経済制裁の緩和は実現しないまま、各国は朝鮮半島問題から関心を遠ざけている。その沈滞感が国内に漂うなか、あえて韓国批判を強めて危機を演出したいようだ。

 北朝鮮の身勝手な思考は相変わらずだが、今回懸念されるのは韓国側の対応である。

 文在寅(ムンジェイン)政権は要求に応じるかのように、ビラ散布を取り締まる法整備の検討を表明した。脱北者らの行動の制限はこれまでも論議されてきたが、表現の自由を侵す恐れなどから強制的な措置は見送られてきた。

 韓国世論も割れている。先の総選挙で圧勝した巨大与党の数による強引な立法を進めれば、国内の分断を深める。法案の具体的な中身は不明だが、慎重な対応が必要だ。

 北朝鮮との融和を最優先課題とする文政権の任期は残り2年を切った。ここで南北関係をこじらせたくないとの思いも働くようだが、自由主義国の原則を損ねる懐柔策に走れば、朝鮮半島の安定にもつながらない。

 南北関係をめぐる直近の原点は、00年の初の南北首脳会談である。平和的方法による統一を誓った共同宣言が出されてから、15日で満20年になる。

 当時の韓国の金大中(キムデジュン)政権は、対話重視の「太陽政策」を掲げる一方、軍事挑発には即座に反撃するといった、硬軟両様のしたたかさを備えていた。

 文政権に求められるのは、北朝鮮の言動に左右されない胆力ではないか。目前の成果にこだわりすぎず、次代をみすえた南北政策を進めてほしい。

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