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 費用対効果に疑問をもたれながら、「導入ありき」で突き進んだあげく、地元の強い反対に直面し、破綻(はたん)を余儀なくされたとしか見えない。

 安倍政権が17年末に閣議決定し、秋田、山口の東西2基で日本全体をカバーするとしていた米国製の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、河野太郎防衛相が計画の停止を表明した。

 5千億円を超す費用がかかる一方、運用開始は早くても25年度以降で、周辺国のミサイル技術の急速な進展に対応できるのかも疑わしい。朝日新聞の社説は、巨額の費用に見合う効果があるのか厳しく吟味すべきだとして、計画の見直しを繰り返し主張してきた。

 唐突な表明とはいえ、河野氏の判断自体は妥当なものといえる。政府は早急に国家安全保障会議(NSC)を開き、正式に白紙撤回を決めるべきだ。

 方針転換の理由は、いま一つ腑(ふ)に落ちない。迎撃ミサイルを発射する際、住民らに被害が及ばないようにするには、切り離されたブースターが演習場内や海上に落ちるようにしなければならない。しかし、そのためには大がかりなシステムの改修が必要となり、その費用と期間を考えると、配備は「合理的でない」というのだ。

 だとすれば、「安全に配備・運用できる」としてきた住民への説明は、いったい何だったのか。地元に理解を求める段階で、解決しておくべき課題であることは言うまでもない。

 陸上イージスの導入は首相官邸の主導で決まり、防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画にも盛り込まれた。米国製兵器の大量購入を求めるトランプ大統領への配慮も指摘される。

 安倍首相は先週金曜に河野氏から報告を受けたが、発表は自らが出席した月曜の参院決算委員会の終了後だった。国会での追及を避けるためとみられても仕方あるまい。きのうになって、記者団に対し「地元の皆様に説明してきた前提が違った以上、これ以上進めるわけにはいかない」と語ったが、説明が尽くされたとは到底いえない。

 コロナ対策の予算が膨れあがる今、税金の使い道には厳しい優先順位が求められる。防衛予算も聖域ではない。これを機に費用対効果を一層しっかりと見極めねばならない。

 技術的困難を乗り越えるのに費用や期間がかかりすぎるというのは、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設も同様である。陸上イージスが合理的でないなら、軟弱地盤の存在が明らかになった辺野古への移設も合理的ではあるまい。こちらもまた、立ち止まる決断を求める。

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