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 判決が認定した事実は、違法な選挙活動のごく一部に過ぎないと見るべきだ。捜査当局による全容の解明が急がれる。

 昨年7月の参院選で広島選挙区から初当選した自民党の河井案里氏の公設秘書で、公職選挙法違反(買収)の罪で起訴された立道(たてみち)浩被告に対し、広島地裁は懲役1年6カ月執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 選挙の際の車上運動員への報酬は、1日1万5千円までと法令で定められている。ところが被告は3万円を支払い、計14人に204万円を渡した。被告側は陣営の方針に従っただけだとして罰金刑が相当だと主張したが、判決は、被告は遊説の行程づくりなどを担う責任者だったと認定し、これを退けた。

 選挙は民主主義の土台であり、公正さが保たれて初めて成り立つ。それを害する行為は厳しく罰せられて当然だ。

 案里氏、そして選挙活動を取り仕切ったとされ、自身の元秘書が同様の罪に問われている夫の河井克行衆院議員の責任は重い。ともに事件について説明を拒んだまま、議員の職にとどまり続けている。「選挙活動は2人の意向を強く反映する形で行われた」と指摘した判決を、夫妻はどう聞いたか。

 執行猶予付きとはいえ懲役刑が確定して、その後一定の手続きを経れば、案里氏に連座制が適用され当選は無効になる。2人は自民党を離れる意向というが、そんなことでは有権者に対してけじめをつけたことにも、政治責任を果たしたことにもならないと知るべきだ。

 そもそも夫妻には、より大規模で深刻な疑惑が持ちあがっている。朝日新聞の取材に対し、地元自治体の議員や後援会関係者ら多数が「参院選にからんで2人が現金を持参してきた」と明らかにしたのだ。検察のこれまでの調べでは、夫妻から約100人に2600万円が渡ったとされる。事実であれば刑事訴追は不可避と言っていい。

 案里氏は、改選数2の広島選挙区で2人目の自民公認候補となった。現職への一本化を望む地元の意向を首相官邸と党本部が押し切り、運動資金として現職の10倍にあたる1億5千万円が供与された。今回の選挙違反事件は候補者や陣営による不祥事・暴走で片づけられる話ではなく、安倍首相をはじめとする政権の責任もまた、厳しく問われなければならない。

 巨額の運動資金が現金ばらまきの原資になった疑いは拭えない。共産を除く各党には国の交付金が支給されており、陣営に渡った金の相当部分は元は税金ということになる。資金の流れをつまびらかにし、市民の前に明らかにすることが不可欠だ。

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