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 いつまでも「やらない」理屈を言い立てるのではなく、すみやかに「やる」と決め、その準備に取りかかるべきだ。

 海外に住む日本人が最高裁裁判官の国民審査に参加できないのは、公務員の選定・罷免(ひめん)権などを定めた憲法に違反すると、東京高裁が判断した。昨年の東京地裁に続く違憲判決である。政府、国会の怠慢をこれ以上放置することはできない。

 在外邦人の選挙権は、98年の公職選挙法改正で衆参両院の比例区についてのみ認められた。最高裁は05年、選挙区の投票ができないのは違憲と断じ、さらなる法改正を経て、すべての国会議員選挙で在外投票ができるようになった。しかし、衆院選にあわせて実施される国民審査は除かれている。

 国民審査は、投票用紙に印刷された対象の裁判官のうち、辞めさせたい人の欄に×を書く方式をとる。裁判で国側は「用紙を在外公館に送る必要があり、作業が間に合わない」と主張した。これに対し判決は、4年前の国民審査法の改正で、告示前でも用紙の作成が可能になったと指摘。技術的な問題は事実上解消され、国側の言い分には理由がないと結論づけた。

 選挙で選ばれるわけではない最高裁裁判官を、国民の統制下におくためにあるのが国民審査だ。参加できないとなれば、在外邦人にとって国民主権は絵に描いた餅でしかない。同種訴訟で東京地裁は既に11年に、現行制度には「重大な疑義」があると述べている。それを知りながら手当てをしてこなかった関係者の責任は重い。

 判決は賠償請求は退けたが、次回、在外邦人に国民審査の権利を行使させないことは違法だと確認した。海外には130万人以上の日本人が住み、在外選挙人名簿には昨年9月時点で約10万人が登録している。

 判決は、現行の投票方法にこだわる必要はなく、たとえば罷免相当と思う裁判官の氏名を自書させるなど、別のやり方を採ることも十分可能だとしている。技術の発展や将来の社会の姿を考えたとき、在外邦人から電子投票・審査を認めていくのも一考に値するのではないか。

 海外に生活基盤をもつ日本人は今後も増える可能性がある。整ったネット環境さえあれば、審査対象の裁判官に関する情報を集めることは容易にできる。世の中の変化にあわせて、在外者の権利の保障を強めていくのは当然の流れだ。

 形骸化がいわれて久しい国民審査だが、今回の裁判は、その重要性を改めて思い起こさせるものともなった。関心を高め、審査の実をあげることは、司法の機能強化にもつながる。

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