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 ■「#withyou」「#ニュース4U」

 コロナ禍による長期休校や、感染防止に注意を払いながらの学校生活に、多くの子どもたちがストレスを抱えています。保護者や先生たち大人もまた、不安や戸惑いを感じているなか、子どもの心にどう寄り添えばいいのでしょうか。朝日新聞が開いたオンラインイベントでの対話などから考えます。

 ■聞いてもらえる安心感を 親・教員らとオンラインイベント

 ストレスを抱える子どもの心にどう寄り添うか。6月14日に朝日新聞のオンラインイベントがあり、リアルタイムや、SNSで読者と情報交換する「#ニュース4U」に寄せられた相談について、精神科医の大野裕さんと、校内に「居場所カフェ」をつくった大阪市立市岡中学校長の西川孝治さんに記者2人がアドバイスを聞きました。

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 「子どもの本当の気持ちを知るには」

 「子どもと長い時間すごす中で、どうしてもイライラしてしまう」

 保護者から多かった声です。

 西川さんは、自校につくった「居場所カフェ」が、「親や先生とは違う、おっちゃん、おばちゃん、お兄ちゃん、お姉さんみたいな人と『斜めの関係』の中でちょっとしたおしゃべりができ、子どもたちの第三の居場所になっている」と紹介。大野さんは「そもそも人の心を知るのは難しい。私も妻から『よくそれで精神科医をやっているね』と言われる」と笑い、「大切なのは、子どもが気持ちを伝えやすい環境を作ること。親が『子どもの気持ちを理解しなければ』と自分を追い詰めると、関係はかえってぎくしゃくしてしまう。『斜めの関係』で話を聞いてもらえる安心感は、今後生きていく上でも大きな力になる」と続けました。

 「イライラ」について、大野さんは、子どもを思い通りに動かそうとするのではなく、「子どもに何を、なぜ期待しているのかを自分に問い直してみることが大切」と助言。生徒たちに「アンガーマネジメント」の手法を伝えているという西川さんは、「昔は『怒るな。我慢せえ』という風潮だったが、生きていれば怒りの感情がわくのは当然のこと」とした上で、「怒りの温度計」で感情を可視化したり、いったんその場から離れて心を静めたりしながら、気持ちを伝える表現力を養おうととりくみ、効果が出ていることを紹介しました。

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 「学校職員の不和や心の不調に、どう対処すればいいか」

 「授業や消毒作業に追われ、心身ともに限界だ」

 学校の先生たちからも、多くの声が寄せられました。

 「学校にいる時間が長すぎると煮詰まってしまう。思い切って早く帰るなど気持ちを切り替えられれば、おのずと解決することもある」と西川さん。先生の負担が増している状況については、「○○せねば」と思いすぎると子どもも居心地が悪くなる、と指摘。安全に留意しつつも、「しないでもいいことをどう省いていくか、(自校でも)整理しながら前に進んでいる」と話しました。

 ■「寄り添う=本人の意思尊重」

 「『寄り添い』と『甘やかし』の境目は」という相談もありました。

 大野さんは「子どもの言うままにしていて大丈夫なのか、と親御さんは心配でしょう」。でも、「これは子どものことを心配しているようで、実は親御さん自身の不安」なのだといいます。「信頼し、見守っていれば、いずれ自分なりに工夫して前に進んでいく力が子どもにはある。ご自分の心配と、子ども自身にかかわる現実的な心配を、区別して考えることが大事です」

 西川さんは、「たとえば『集団になじめないなら別室登校でも』という対応を、甘やかしと見る人もいるだろう。でも、寄り添うとは、あくまでも本人の意思を尊重し、自分で前に進んでいけるように見守ること。時間はかかるが、子どもの心がささくれず、しっとりしていくことにつながる」といいます。子どもの話を否定せずに受け止めると同時に、「こんな方法もあるかもしれないよ」と助言を添えることも、大人としてできる「寄り添い」のかたちと考え、心がけているそうです。

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 「しんどい子に、『学校に来なくてもいいよ』とは違う言葉をかけたい」

 ある先生からの声です。

 「やさしい先生なんやろなあ」と言う西川さんは「確かに『来なくていいよ』だと、子どもは『なんや、もう僕、諦められたのか』と感じてしまうかもしれない」。行きたくないという気持ちは受け止めた上で、「あなたの学びを止めることはできない。でも、学校に来ることが唯一の方法ではない。(オンライン学習など)いろいろな学び方があるけど、どうだろう」と具体的に提案し、選んでもらうことが大事だ、と続けました。

 長期休校を機に、あらためて問われた「学校で学ぶことの意義」。西川さんは「他者と交わることで、違う考えを知ったり、協力する喜びを感じたりすることにある」といいます。「学習の遅れ」を取り戻すことだけに注力するのではなく、「学校だからこそ、こんなことができる、おもしろいやろ、というのを、授業のなかで5分でもいいから出していけたら。生徒たちにも、新しい学校のスタイルを一緒につくっていこうと呼びかけています」。

 大野さんも「コロナ禍は、毎日学校に行く、といった『当たり前』を考え直すきっかけになった。親や先生は『こうしなければ』という決めつけに縛られがちだが、今までの価値観から自由になってほしい」と話し、対話をしめくくりました。

 オンラインイベントには、約750人が参加しました。(三島あずさ)

 ■「ちゃんと」の幅広げよう 娘が不登校を経験した漫画家・青木光恵さん

 娘が中学と高校で不登校を経験した漫画家の青木光恵さんは、親としての揺れ動く気持ちを『中学なんていらない。』『不登校の17歳。』につづりました。娘はこの春、大学を卒業し、会社員に。青木さんに、いま思うことを聞きました。

     ◇

 娘はいじめがきっかけで、中学2年の夏から不登校に。高校でも、行けたり行けなかったりという日々が続きました。親として、いろいろな葛藤がありました。

 不登校の時期は、晩ご飯だけ作ってもらったりしていました。「今日も一日何もしなかった」というのは嫌じゃないかな、と。わりとよくやってくれていましたが、「やる」と言ったのに、やらない日もあって。けんかになって、娘も私も泣く、みたいなこともありました。

 学校に行けず、十分に勉強できないことで将来の選択肢が狭まり、人生を楽しめないのではないか、という点はとても心配でした。

 でも、いまはオンライン学習など学ぶ手段がぐっと増えました。置かれた状況や好みに合った学び方を選び、周りも「それもいいね」と受け止められればいいですね。「ちゃんとしなきゃ」という思いが強かったり「ちゃんと」の範囲が狭かったりすると親も子もつらいので、「ちゃんと」のバリエーションがもっと増えればいいなと思います。

 私は自由な仕事をしているためか、「絶対こうでなければ」というのがなく、「好きに生きればいい」と思っていて、それは娘と接するうえでもよかったのかもしれません。

 学校に行きづらい、と悩んでいる子や親へのアドバイスを求められることがありますが、親子の関係性や経済状況、家の間取りに至るまで、さまざまな要素が絡んでくるので、本当にケース・バイ・ケース。「正解」はない、と思っています。

 「我が子なのに(親なのに)なぜわかってくれないの?」とお互いに思ってしまうと、つらいですよね。親子とはいえ他人ですし、お互いに見せない顔もある。「わからなくて当然」「子どもの人生は子どものもの」「正解はない」と思っておくだけでも、少し気持ちが違ってくるかもしれません。(聞き手・三島あずさ)

 ■親子でイライラ、人格変わった

 今回の長期休校は子どもたちの心にどのような影響を与え、保護者や教員はどのようなことに悩んでいるのでしょうか。イベント参加者から寄せられた声の一部を紹介します。

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 ●中3、中1、小2の子どもがいます。長期間友達に会えなかったこと、受験への焦り、学校が再開しても行事がなくなるといううわさなどから、子どもたちが喪失感、怒り、悲しみを感じている。その気持ちにどう寄り添えばいいか。

 ●大好きな野球を思いっきりするために中学受験をしましたが、全てにやる気をなくし、野球すら全くしなくなりました。朝夜逆転で夜中はずっとゲームかYouTube。しかし、どちらも実は全く面白くなく、何をしてもやる気がでない、楽しみもない、と言います。

 ●睡眠リズムが崩れ、学校に行けない日が多くなっています。朝起きられない日は何事にも身が入らず、スマホが手放せません。何もやりたいことがないからスマホをしているだけで、本当はしたいわけではないと言います。

 ●教員です。人の子の話なら、ふんふん、そうかそうか、と聞けるのに、自分の子どもになると、カッカとしてしまう。過干渉をやめられない。目先のことでぎゃーぎゃー言うのは嫌なのに。苦しいです。

 ●高3の娘が学校に行きにくくなって休んでいます。「友達との距離感や、今までどうやって話していたかが、わからなくなった」と言っています。

 ●高1男子の母です。第1希望だった高校の入学式も中止になり、一度も登校できていないまま1日8時間のオンライン授業で、部活もできずイライラ。反抗ばかりで私もイライラ。会話もお互いけんか口調になります。コロナ前とは全く人格が変わったように感じます。

 ●娘が、大好きな家族に病気をうつしたくないと、手を過剰に洗うようになりました。どう接したら不安を軽減できるでしょうか。

 ●学校職員です。学校ではかなり気をつかって手洗いをさせ、密にならないように気を配っていますが、これが逆にストレスにならないか心配です。

 ◇長い休校期間を経た子どもたち。イベントを通じ、我が子が抱える不安を感じ取っている親が多くいることを、改めて感じました。親にとっては、子どもが心配だからこそ、その気持ちをわかってあげたいし、ケアしたいと思うのだと思います。

 登壇者の大野裕さんは、そんな保護者の心情に理解を示しつつ、「大切なのは子どもが気持ちを誰かに話せる環境をつくり、『わかってもらえる』という体験をすること」と話していました。その言葉から感じたのは、「子どもが安心できること」が目的ならば、安心させることができる人は必ずしも親である必要はないということでした。

 大人は、不安を抱える子どもたちを「守る」だけでなく「見守る」ことも必要なのではないでしょうか。(金沢ひかり)

 ◇休校期間中、私は自分を責め続けていました。新生活が期待と違って「面白くない」と泣く小学1年の長女。登校日前日、泣きながら大量の課題に取り組む小学3年の長男。豊かに過ごす家庭もあるのに、我が家はたくさん泣かせてしまいました。

 折れそうな心に、「悩みや不安は未来への希望」という大野裕さんの言葉が染みました。今回見えた問題は、元々あった問題がコロナで可視化されただけかもしれません。

 オンライン学習が進み、学校の存在意義が問われる中、西川孝治さんによると教育現場でも新しい学びが模索されています。変化するなら子どもに寄り添う形にしてほしい。そのためには保護者と学校とが、それぞれの悩みと不安をもっと共有していくことも大事だと感じました。(山根久美子)

 ◇イベント当日に大野裕医師が紹介した、大野医師監修で朝日新聞社と開発中のストレスケアアプリ「こころコンディショナー」(https://carechat-demo.kiku-hana.jp/別ウインドウで開きます)を、期間限定で無料公開中です。認知行動療法を活用したストレス対処ツールです。

 ◇来週7月5日は「コロナ、子育て世帯の負担は」を掲載します。

 ◇写真は瀬戸口翼、滝沢美穂子が担当しました。フォーラム面へのご感想やご提案をasahi_forum@asahi.comメールするでお待ちしています。

 

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