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 予期せぬ犯罪で命を落とした人の遺族や、心身に傷を負った被害者をどう支えるか。課題は山積しているが、取り組みの一つとして国による給付金の充実を急ぎたい。

 政府は今月、2019年度の犯罪被害者白書を閣議決定した。その第1章を「損害回復・経済的支援等への取り組み」にあて、加害者側への損害賠償請求に関する支援とともに犯罪被害給付制度を取り上げた。

 殺人など故意の犯罪に対応し、損害賠償や労災などの補償が十分に得られない場合に備える制度である。通り魔殺人事件の遺族らの訴えを受けて1981年に法律が施行され、95年の地下鉄サリン事件などを契機に順次拡充されてきた。被害者が亡くなった場合の「遺族」、障害が残ったときの「障害」、医療費の自己負担分や休業損害を考慮する「重傷病」と三つの給付金がある。

 しかし、その金額はとても十分とは言えない。

 警察庁によると、19年度は遺族給付金の1件あたり最高額は2500万円弱で、平均では613万円。賠償されなかったり支払いが少額にとどまったりした場合に補うのが役割とはいえ、遺族の暮らしを支えるには力不足だ。障害給付金も平均319万円にとどまる。

 昨年の京都アニメーション事件など、寄付金の形で示された人々の善意が被害者を支える事例はあるが、誰もが被害にあう恐れがあるだけに公的な仕組みの充実が不可欠だ。

 給付金を拡充する制度改正の歩みは遅々としている。経済的打撃を緩和するという趣旨は実現しているのか。04年に成立した犯罪被害者等基本法が「再び平穏な生活を営むことができるよう支援」とうたう、その理念にかなう金額なのか。改めて問い直さねばならない。

 基本法は自治体の責任も明記する。兵庫県明石市のように独自の基金を立ち上げた例もあるが、個々の被害者に向き合い、ケアを尽くす態勢を整えることが果たすべき役割だろう。

 白書によると、全ての自治体に総合対応窓口があるが、求めたいのは犯罪被害者支援に目的を絞った条例の制定だ。そうした条例があるのは今年4月時点で都道府県の4割強、政令指定市の3分の1余にとどまり、市区町村では2割に満たない。行政の縦割りを排し、関係機関や民間団体と連携して施策を展開していく、その基盤として条例を位置づけたい。

 国と自治体、行政と市民が力を合わせ、事件の被害者を支える。犯罪自体を減らす努力を続けながら、そうした社会をつくっていきたい。

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