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 JR東海が建設中のリニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間の開業が、予定の2027年から遅れる公算が大きくなった。環境への影響を懸念する静岡県の同意が得られず、最大の難関とされる南アルプスを貫くトンネル工事を進められないからだ。

 環境をどう守るつもりなのか。JR東海は地元の自治体や住民の理解が得られるよう、説明を尽くさねばならない。

 工事が遅れているのは、南アルプスの地下最大1400メートルを掘るトンネルの静岡工区(8・9キロ)。静岡県は、工事で地下水脈が分断され、下流の60万人が使う大井川水系の流量が減ることを心配し、河川法に基づく工事への同意を見送ってきた。

 JR東海によると、6月中に着工できなければ、27年開業の予定に間に合わないという。先週、金子慎社長と静岡県の川勝平太知事が会談したが、議論は平行線をたどった。

 静岡県では100年ほど前、東海道線丹那トンネルの工事で水枯れが起きた。地元が再発を心配するのは当然だろう。

 JR東海は13年に、大井川の流量減少の可能性を指摘していた。しかしその後、十分な対策を講じて丁寧に説明する責務を果たしてこなかった。今回ようやく、水問題をめぐって社長が初めて知事と会談した。7年間何をしてきたのか。

 工事を急ぐあまり、環境や地域住民への配慮がおろそかになっていなかったか。自らの姿勢を省みる必要がある。

 国土交通省は、地下水への影響などを検証する有識者会議を設置した。双方の意見の隔たりを埋めるためだが、金子社長は4月末の初会合で「(静岡県から)実現しがたい課題を示されている」と発言。かえって静岡県が反発する結果を招いた。

 静岡県にはリニアの駅が建設されない。川勝知事は過去に「県にまったくメリットがない」と発言したこともある。

 ただ、名古屋市など駅が設置される自治体では、開通を見据えた町づくりが進む。環境問題に解決の道筋がつけば、協力を拒むものではないだろう。

 今後は有識者会議の結論が焦点になる。拙速にならぬよう、科学的な検証が求められる。国交省は会議の透明性や中立性にも留意しなければならない。

 コロナ禍のもと、東海道新幹線の乗客は一時、前年比で9割も減った。テレワークの普及が進み、従来のような出張の利用は見込めない可能性がある。

 リニア建設では、国が財政投融資で3兆円を低利融資している。JR東海は需要想定を見直したうえで、採算面についても国民に説明するべきだ。

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