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 日本を守るために駐留しているはずの米軍が、逆に市民の安全を脅かし、不安にさせる。そんな事件がまた起きた。

 沖縄・米軍嘉手納基地内の危険物取扱施設で22日朝火災があり、有毒の塩素ガスが発生。米軍によると、基地内で約100人が目やのどの痛みを訴えた。

 それ自体ゆゆしき問題だが、見過ごせないのは通報の決定的な遅れである。

 米軍から嘉手納町役場に一報が入ったのは、出火から約2時間半後。ガスの発生が正式に伝えられたのは、10時間以上が過ぎた午後7時半ころだった。この間、米軍はフェイスブックを通じて基地内の関係者には注意を呼びかけていた。「状況を把握し、専門家の判断を得てから対応した」「外部へのガス流出はない」と米側は説明するが、誰が納得するだろう。

 煙が激しくあがっているのは基地の外からも確認できた。フェンスの向こうでいったい何が起きているのか。自治体、住民は蚊帳の外に置かれ続けた。

 4月には普天間飛行場から、発がん性が疑われる化学物質を含む泡消火剤が大量に漏れ出して、国、県、地元宜野湾市による基地内への立ち入り調査が行われたばかりだ。不測の事態が起きればまず一報を寄せ、その後も逐次報告する。それが当然の対応ではないか。

 日米両政府は97年、在日米軍が事件・事故を起こした時の手続きに合意した。そこでは、環境に影響を及ぼす可能性がある場合は、米側は日本側に速やかに通報すると定めている。今回の火災について河野太郎防衛相は「通報が適切ではなかった」との認識を示し、確実な情報伝達を米側に申し入れるよう、担当者に指示したと述べた。

 火災の原因究明と再発防止策が求められるのは言うまでもない。そこで歩を止めず、両政府は経緯を検証し、連絡通報体制の見直しに取り組むべきだ。

 在日米軍基地での大規模火災は、06年に長崎県の海軍佐世保弾薬補給所で、15年には相模原市の陸軍相模総合補給廠(しょう)でも起きている。沖縄か本土かを問わず、日本全体の問題ととらえる必要がある。

 全国知事会は18年に、事件・事故の際には自治体職員が迅速かつ円滑に基地内に立ち入れるよう、日米地位協定を抜本的に見直すべきだと提言した。ドイツが米国と結んでいる協定にはその旨の規定があり、決して無理な注文ではない。

 「沖縄慰霊の日」の前日に起きた火災と有毒ガスの発生は、過重な負担を強いられる基地周辺住民の現実を、改めて社会に突きつけた。いつまでも手をこまぬいてはいられない。

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