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 香港での反体制的な言動を取り締まる法律がきのう、中国の北京で成立した。

 「香港国家安全維持法」と名付けられているが、香港の頭越しに可決、施行された。

 19世紀以降、英国の植民地支配下で育まれた独特の都市文化は変質せざるをえないだろう。この法律により、香港の独立した司法権や立法権が根本的に損なわれかねないからだ。

 1997年に中国に返還されてから23年。この間、香港の自治を守ってきた「一国二制度」が実質的に崩れることを、深く憂慮する。

 84年の中英共同声明は「高度の自治」を約束していた。今回の一方的な法制化により、中国が国際的な公約に背いたのは明らかだ。

 香港の人びとの訴えや米欧、日本などの懸念に耳を貸さず、強行したことは厳しく非難されるべきである。

 「一国二制度」はそもそも70年代に、当時の最高実力者だったトウ小平が台湾統一のために発案した考えが土台にある。香港への適用は、共産党政権と自由社会が一つの国家に共存しうることを証明する壮大な実験にほかならなかった。

 しかし今回、中国はその試みを自ら打ち壊した。一党支配の権威主義は、自由社会の価値観を許容しない姿勢を鮮明にした。昨年来、街頭デモを繰り広げた若者らだけでなく、世界を深く失望させている。

 香港が返還されたころは、冷戦終結後、旧東側に自由主義が流れ込んだ時期だ。その風は香港の窓から中国にも吹き込むのでは、との期待もあったが、実際は逆の事態になった。

 急速な経済発展を続けた中国共産党政権はむしろ強権支配を強めており、固有の自由を誇った香港社会も強引に「中国化」しようとしている。

 もはや香港だけの問題ではない。自由や人権を尊重せず、既存の秩序に挑むかのような中国とどう向き合うかという国際社会全体の問題である。

 「一国二制度」が想定された台湾から、「制度が実現不可能だと証明された」との不信の声が上がるのは当然だろう。中国は台湾との平和的な統一の道を自ら閉ざしたに等しい。

 香港ではすでに中国批判などの言論を控える萎縮の空気が漂い始めている。迫害を恐れ、海外に逃れようとする民主活動家らもいるようだ。

 アジアを代表する自由主義国として、日本は彼らの受け入れに柔軟な対応をとるべきだ。他の主要国と足並みをそろえ、香港の自由を奪う圧迫を容認しない確固たる姿勢を示していかねばならない。

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