[PR]

 宇宙の利用が拡大し、民の力が問われる時代に、安全保障への貢献が最優先なのか。

 政府が先月末、これから10年の基本方針となる、新たな宇宙基本計画を閣議決定した。5年ぶりの改定だ。

 現代の社会・経済システムと宇宙空間は、もはや不可分と言っていい。通信や物流など様々な分野で衛星の役割が増しており、産業や科学技術の基盤強化が待ったなしの課題だ。

 ところが、安倍政権下で3度目となる今回の計画は、安保への傾斜を一層強めている。

 「宇宙を『戦闘領域』や『作戦領域』と位置付ける動き」が米国などで広がっているとの認識が前文で示され、宇宙政策の「目標」として、「災害対策」「科学・探査」「経済成長」の前に、真っ先に「宇宙安全保障の確保」が掲げられた。

 「具体的アプローチ」の冒頭にも、情報収集衛星の10機体制など安保分野の取り組みが列挙された。

 多数の小型衛星を打ち上げて一体運用する「コンステレーション(星座)」に、ミサイルの探知・追尾といった早期警戒機能を担わせるべく、米国と連携して検討し、必要な措置を講じると明記された。

 また、周囲の状況を把握する米国の機器を載せることになった日本版GPS、準天頂衛星「みちびき」の担当省庁には、防衛省が加えられた。

 軍事的な宇宙利用を強める中国、ロシアを「最大の脅威」と位置づけ、同盟国との連携強化を掲げる米国の国防宇宙戦略に呼応する動きといえる。安保への傾斜はとりもなおさず、宇宙空間での日米同盟の強化だ。

 たしかに、宇宙が安全保障上の「急所」となったことは間違いない。だが、宇宙における軍拡競争をエスカレートさせたのでは、元も子もない。

 軍事利用と一線を画してきた日本にふさわしい、バランスのとれた政策を進めるべきだ。限られた予算や資源をいかに有効に使うか、科学技術の進展や経済活動への影響にも、細心の目配りが求められる。

 政府は昨秋、トランプ米政権が主導する有人月探査計画「アルテミス」への参加を正式に決めた。基本計画では「日本人宇宙飛行士の活躍の機会を確保する」としている。

 日本は「はやぶさ」など小惑星探査の分野で、世界をリードする実績をあげてきた。米主導のプロジェクトへの出費がかさみ、他にしわ寄せが及ぶのでは本末転倒だ。

 対米関係に振り回されず、着実に技術を磨き、自らの強みを伸ばすことこそ、将来の日本の立場を強くする。

こんなニュースも