[PR]

 新型コロナ対策に注力するため、紛争の当事者はすぐに戦闘を90日間停止せよ。そう求める決議を、国連の安全保障理事会が全会一致で採択した。

 曲折を経たが、国際社会としての結束を示したことは歓迎したい。言葉だけに終わらせず、一つでも多くの地域で停戦を実現させるため、国連加盟国の真剣な努力が求められる。

 「コロナ停戦」はグテーレス国連事務総長が3月末に提唱し安保理が決議を模索していた。採択に100日以上かかったのは、米中が世界保健機関(WHO)の役割をめぐり対立したからだ。結局、WHOに触れないことで、採択にこぎつけた。

 安保理は「国際の平和と安全の維持」に責任を負うと国連憲章が定める。それなのに、危機に対処できない機能不全を続けてきたのはゆゆしい事態だ。

 停滞の影響は小さくない。事務総長の提唱は複数の武装勢力が受け入れを表明するなど、一定の効果があるかに見えた。だが安保理の調整が難航しているうちにその勢いは失われ、戦闘に逆戻りした例もある。

 そんな状況を見かね、6月下旬には日本を含む170の国や地域が、「コロナ停戦」を支持する共同声明を出した。とりわけ安保理の常任理事国は、今回の失態を反省すべきだ。

 もちろん、紛争はそれぞれの地域の歴史や政治構造、関与する外国の対立関係など複雑な背景を持つ。決議があったから、一律に停戦が実現するとはいえまい。ただ、加盟国を拘束し、従わなければ制裁の可能性もある安保理決議に重みがあることは間違いない。

 新型コロナの感染者は世界で1千万人に達し、死者は50万人を超えた。流行の中心は欧米の先進国から新興国や途上国に移っている。医療態勢の脆弱(ぜいじゃく)な途上国のなかでも紛争地では人道物資の搬入もままならない。

 とりわけ深刻なのがシリア、イエメン、リビアなどを含む中東である。いずれの紛争も、外国が介入することで複雑化、長期化しており、コロナ禍で人道危機が深まっている。

 リビアでは最近、隣国エジプトのシーシ大統領が軍事介入する構えを公言した。トルコが兵力を送り込んだことで、自分たちが後押しする組織が劣勢に追い込まれているからだ。両国とも、紛争停止を求める共同声明に署名している。言行不一致は直ちに改めねばならない。

 紛争の解決は、地域の国々だけでは実現できない。世界の軍事力の大半を占める安保理の常任理事国、特に米国とロシアの責務は大きい。いまこそ、その影響力を紛争の拡大ではなく停戦実現のために用いるべきだ。

こんなニュースも