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 政権が異例のテコ入れをした選挙戦で、大がかりな買収が行われたとして、現職の国会議員夫妻が刑事責任を問われることになった。政治への信頼を回復するには、公判での真相解明と併せ、安倍首相や自民党の説明責任が厳しく問われる。

 河井克行前法相と妻の案里参院議員がきのう、公職選挙法違反の罪で起訴された。案里議員が広島選挙区で初当選した昨夏の参院選をめぐり、地元の県議ら100人に約2900万円の現金を配った買収の罪である。

 夫妻は正当な政治活動の支出だったとして買収の意図を否定しているという。しかし、昨秋に別の選挙違反疑惑が明るみにでて以来、まともに説明責任を果たさず、国会での活動も十分できずにきた。その政治責任の重さを自覚するなら、そろって議員の職を辞すべきである。

 一方、現金を受け取った側の刑事処分は見送られた。克行議員が一方的に現金を渡していたことなどを総合的に考慮したとみられるが、違法性を認識していた議員や、受領を報じられるまで否定していた首長もいる。十把ひとからげに不問に付すのは釈然としない。

 事件の背景には、安倍政権が地元の反対を押し切り、案里議員を強引に擁立したことがある。落選した現職への10倍にあたる1億5千万円が党本部から案里議員側に渡された。この資金が買収に使われたのではという疑いに対し、自民党からはいまだ納得のいく説明はない。

 党関係者によると、1億5千万円のうち1億2千万円は、税金が原資となる政党交付金だという。リクルート事件など、金権政治への批判から、90年代に小選挙区制の導入を柱とする政治改革が行われた。その一環として導入された政党交付金に不信の目が向けられている。

 にもかかわらず、自民党は責任逃れに終始している。二階俊博幹事長は、党本部で公認会計士が各支部の支出をチェックしており、買収に使われることはありえないと説明していたが、夫妻の逮捕後は一転、支部に渡した後、「その先までは党は承知していない」と言葉を濁すようになった。

 野党の公開質問状への回答も「政治資金は法令に従い適正に処理」しており「公開される報告書をご覧下さい」と木で鼻をくくったものだった。

 首相はきのう「責任を痛感」「国民におわびする」などと述べたが、対応は相変わらず党任せだ。首相補佐官に起用するなど、克行議員を重用し、自らの秘書を派遣して選挙戦を全面支援したのは、他ならぬ首相ではないか。首相こそが率先して疑念に応えなければならない。

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