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 九州などに大きな被害をもたらした梅雨前線は、列島付近に引き続き停滞している。警戒を怠ることはできない。

 身を守るには、科学的知見を学び、過去の災害から教訓をくみ取り、それらを具体的な行動に生かすことが必要だ。欠かせないのが気象庁や自治体が出す情報である。迅速で正確な発信がいかに重要か、関係者は改めて肝に銘じてほしい。

 今回の大雨で気象庁は「大雨特別警報」を5日間に3度出した。検証にはまだ早いが、気の抜けない状況が続くからこそ、省みるべき点は速やかに省み、その結果を住民の安全確保につなげなければならない。

 熊本県の球磨川が氾濫(はんらん)した4日、特別警報が発表されたのは午前4時50分。就寝していて、避難の時間を十分とれなかった人が多いとみられる。

 特別警報が予想される場合、同庁は事前に会見を開いてきたが、今回はなかった。土砂災害の危険度を示す土壌雨量指数などが、そのレベルに達するとは予測できなかったという。

 東日本大震災や何度かあった大雨で、それまでの「警報」が住民の迅速な避難に結びつかなかったことを教訓に、13年に設けられたのが特別警報だ。重大な危険が差し迫った状況にあることを人々に知らせ、命を守る行動を促すのがねらいだ。

 残念ながら今回はその目的を果たせたとは言い難い。前日の明るいうちに予告があれば、自治体による早めの避難指示などにつながった可能性はある。

 たしかに、積乱雲が次々と発生して雨を降らせる線状降水帯は予測が難しい。しかし、台風や熱帯低気圧によるものを除くと、国内で近年発生した集中豪雨の約6割は、この現象が関係しているという分析もある。雨の降り方が変わったことを前提に、予報精度の向上を図るのが急務だ。

 住民の側も、特別警報が発表されたときは、重大な災害が起きる可能性がすでに著しく高まっている状態だということを、再認識する必要がある。その前段の「警報」の時点で行動をとることを習慣づけておかなければ、自身や家族の安全を守るのは難しい。

 自治体や気象庁が出す防災情報は、大きな災害がおきるたびに、実際の避難につながるよう名称などを変更してきた。今回の大雨でメディアが伝えた5段階の警戒レベルによる発信は、2年前の西日本豪雨の被害を受けて導入された方式だ。

 こうした取り組みがどこまで功を奏したか、逆に真意を伝え切れていない面はないか。点検を重ね、必要に応じてさらなる改善を図ってもらいたい。