(10代の君へ)好きなこと、夢につないで 辻井伸行さん
ピアノは小さい頃から体の一部で、友達みたいなもの。僕は言葉で表現するより、音楽で表現する方が得意なので、なくてはならないものなんです。
10歳でオーケストラと共演し、12歳でソロリサイタルを開きました。17歳の時にショパンコンクールに参加し、「批評家賞」をもらいました。20歳で参加したバン・クライバーン国際ピアノコンクールは優勝することができ、珍しく涙が出ましたね。
ピアニストになるんだと決めたのは10歳の時。コンクールで優勝した時でした。バイオリンも4歳から小学2年生まで習っていたけど、ピアノの方が表現の幅が広いし、いろんな音が出せるところがいい。ピアノが嫌いになったこと? 一度もないですね。
眼球が成長しない「小眼球」と診断され、生まれつき全盲の視覚障害があります。何で見えないんだろうと思ったこともあったけど、ピアノも弾けるし、みんなと同じことも出来る。だから、「盲目のピアニスト」と呼ばれるのは嫌でした。音楽に障害は関係なく、1人のピアニストとして見てほしかった。
思春期の頃は反抗期もありました。母は目が見えなくても好きなことは何でもやらせてくれ、コンクールで優勝すると褒めてくれるんですが、産婦人科医の父からは「ピアノ以外のことも勉強しないとダメだ」とよく言われ、一時はうるさいなあと思ったこともありました。
関係が変わり始めたのは高校生になってから。一緒に散歩に行く機会があり、この辺りから、いろいろ言ってくれているのは僕のためなんだなと思えるようになりました。川沿いを歩いた思い出で「川のささやき」という曲を作りました。今は父と二人でお酒を飲むこともあり、とても感謝しています。
僕が好きなことをやらせてもらったように、みなさんもとにかく好きなことを見つけて、気分転換もしながら夢に向かってほしいですね。いろいろなことに挑戦したらいいと思います。(聞き手・西村奈緒美)
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つじい・のぶゆき ピアニスト 1988年、東京都出身。映画「羊と鋼の森」でエンディング曲を演奏。作曲家としても活躍し、映画「神様のカルテ」で日本映画批評家大賞を受賞。
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