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 20年版の防衛白書が公表された。1年間の防衛省・自衛隊の活動や、国際情勢に対する認識、防衛政策の方向性を内外に明らかにするものだ。

 今年は1970年の刊行開始から50年の節目にあたる。

 「国の防衛には、何よりも国民の理解と積極的な支持、協力が不可欠である」。河野太郎防衛相は巻頭言で、創刊当時の中曽根康弘防衛庁長官の言葉を引いた。安全保障政策のよって立つ基盤は国民の理解であり、白書はその重要な手段のひとつという位置づけだ。

 A5判約100ページから出発した白書は、今やA4判600ページ近い。日本を取り巻く安全保障環境の変化や、自衛隊の活動の大幅な拡大を反映したものだろう。だが、議論の分かれるテーマについて、国民の判断材料となる情報が十分示されたかといえば心もとない。

 その典型が、河野氏が先月、突然発表した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」断念に至る記述だ。

 秋田市の演習場を東日本で唯一の適地とした報告書に誤りが見つかったり、住民説明会で職員が居眠りをしたりしたことを「極めて不適切」と認め、「真摯(しんし)に反省」するとしたものの、肝心の計画撤回については、防衛省と安倍首相の発表内容をそのまま掲載しただけである。

 白書の対象が基本的に3月末までの1年だとしても、異例の決断の説明としては素っ気ない。経緯の検証や責任の所在もあいまいなままだ。

 沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設も、海底の軟弱地盤の改良工事に12年、9300億円が必要としながら、普天間の「一日も早い全面返還の実現に向けて全力で取り組んでいく」とした。まったく説得力に欠けると言わざるをえない。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、項目をたてて「国際社会が連携して対応すべき課題」と位置づけた。そのなかで、特に中国などが「偽情報の流布を含む様々な宣伝工作なども行っていると指摘される」と記して、警戒感を示している。

 国際情勢は複雑であり、軍事だけでなく、外交や経済、感染症対策も含めた総合的な安全保障が問われている。安倍政権下で創設された国家安全保障会議(NSC)の比重が増しており、白書も、その体制の説明に1ページを割いたが、安保政策の全体像を知るうえでは、この政権中枢の動向にかかわる情報も、最大限開示される必要がある。

 国民の理解と支持を得ることが白書創刊の原点だとすれば、今こそそこに立ち返るべきだ。それが、厳しい現実に直面する安保政策の礎となる。