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 組織の不正に加担させられて命を絶った元職員の訴えと、「真実を知りたい」という妻の思いにどう向き合うのか。

 財務省と安倍政権の「良心」が問われている。これまでのように真相を語ろうとしない姿勢を続けるのは、国民への重大な背信である。

 元職員は、同省近畿財務局に勤めていた赤木俊夫さん(当時54)だ。森友学園への国有地売却をめぐる公文書の改ざん問題が発覚した後の2年前、手記と遺書を残して自死した。

 妻の雅子さんが、国と当時の同省理財局長の佐川宣寿(のぶひさ)氏に損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁で始まった。今後、佐川氏や関係職員に法廷で証言を求めていく考えだ。

 国会で実態と異なる答弁や説明拒否を繰り返した佐川氏をはじめ、財務省はすでに根深い隠蔽(いんぺい)体質を露呈させている。

 学園と財務局との交渉記録など政府文書の不開示を争う別の訴訟が起こされ、昨年来、違法とする判決が続いた。特に先月の大阪地裁は「意図的に不開示としており、相当に悪質」と断じた。

 俊夫さんの死は昨年、公務災害に認定された。雅子さんはことし4月に文書の開示を請求したが、財務局はコロナ禍に伴う業務多忙を掲げ、文書の大半について開示の可否を決める期限を来年5月に延ばした。これに対しても、雅子さんは裁判を起こしている。

 今回の訴訟の焦点は、佐川氏の指示の有無にとどまらない。俊夫さんの手記は、佐川氏の後任理財局長である太田充・次期事務次官も虚偽答弁を続けたと指摘。他の職員らにも言及し、本省が主導し財務局が従わされたとする経過を記している。

 佐川氏を要職に起用し続けた麻生財務相をはじめ、財務省全体が問われているのだ。

 そして安倍首相をめぐる問題である。森友学園が開設を目指した小学校の名誉校長に妻昭恵氏が就いていたことを受け、首相は17年の国会で「私や妻が関与していたら、首相も国会議員もやめる」と答弁した。これが一連の不正の引き金になったとの見方は根強い。

 財務省はこのまま虚偽の説明を続けることで国民の信任を得られるのか。俊夫さんは手記にそう書き残した。

 改ざんは誰が誰のためにやったのか。原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか。雅子さんはこう問い続けている。

 第三者委員会による再調査を要求する署名運動は、35万筆余りを集めた。多くの国民が雅子さんとともに真相の解明を求めている。

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