(声)あの夏この夏 玉音放送と澄んだ美しい空と
■みんなで語ろう あの夏この夏
無職 犬伏寿美(東京都 87)
75年前の8月15日、大阪府内の疎開先。私は正座をして、意味不明のラジオ放送を聞いていました。
母が涙を流しています。
皆は黙っています。
父が「日本は負けた」と言いました。
しばらくして、私は薄暗いその部屋を出て、外に行きました。
外はとても、とても明るかった。
何の音も聞こえず、動くものもなし。
ただ、暖かく明るかったのです。
私は空を隅から隅まで見ました。
黒い一粒の点が、みるみる大きな敵機になり、やってくるのを探しました。
でも、その日の空は静かで、明るい、美しい青空でした。
今まで見たことがない、広くて青い空がありました。
これは、どういう世界だろう。
足元から上ってくる熱気を感じながら、私は何もない、澄んだ光の中に立っていました。
12歳の夏でした。
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