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 安倍首相に改めて求める。唯一の戦争被爆国として、核兵器の開発や実験、製造、保有、使用などを許さない核兵器禁止条約に背を向けるのではなく、参画に向けて動くべきだ。

 原爆投下から75年。きのう、長崎市の田上富久市長は平和宣言で核禁条約への署名と批准を再び政府に迫った。被爆者の代表も首相に対し「被爆者は我が国の核禁条約不参加に涙を流したが、今後も運動を続ける覚悟だ」と語った。6日の広島に続く、被爆地発の訴えである。

 しかし安倍首相は今年もそっけなかった。あいさつでは核禁条約という単語にすら触れず、被爆者代表との会談でも「核兵器廃絶というゴールは共有しているがアプローチが違う」と、従来の発言を繰り返した。

 被爆者の声を原動力に、国連で核禁条約が採択されてから3年余り。核廃絶キャンペーン組織「ICAN(アイキャン)」によると既に44カ国が批准し、「批准国が50カ国に達してから90日後」との条約発効が視野に入りつつある。

 国連の中満泉・事務次長は今月上旬の広島での討論会で「日本政府は核禁条約に扉を閉ざさないでほしい」と述べ、条約を巡る議論をフォローしつつ、将来的にどう関わるか議論を深めるよう呼びかけた。現状のままでは被爆国が国際社会に誤ったメッセージを発してしまう――。発言に込められた危機感を政府は共有するべきだ。

 米国を含む核保有国が核禁条約に反対し、日本が米国の「核の傘」の下にあるのは事実だ。ただ、日本政府は「立場の異なる国々の橋渡しに努める」と強調しながら、目立った成果をあげられていない。

 長崎市の田上市長は、政府に加えて初めて国会議員にも条約参加への取り組みを求めた。立憲民主党の枝野幸男代表は、米国と同盟関係にある北大西洋条約機構(NATO)加盟国のオランダで核禁条約に参加する道を模索する動きがあるとして、「どのような条件が整えば条約の批准に向かえるか。国会で与野党が真摯(しんし)に話し合う」ことを広島の討論会で提案した。

 広島出身の被爆者、サーロー節子さん(88)=カナダ在住=は6月、安倍首相ら世界各国の首脳に核禁条約の批准や推進を求める手紙を送った。そこには「条約の価値を是認すらしない今の日本政府」に関して、「核保有国の共犯者になる」「国際社会で信用を失う」との警告が記されている。

 核兵器は「必要悪」ではなく「絶対悪」だ。核禁条約が体現するこの考えを追求する責務が、日本にはある。「核の傘=核禁条約に不参加」という思考停止に陥ってはならない。

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