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 安倍政権の支えと言われた「アベノミクス」。不人気な政策の実行や、スキャンダルの噴出があっても、経済が盤石であれば支持は揺らがない。それが政権の基本戦略と言えた。

 だが、その経済政策も実は行き詰まりが見えていた。政権発足直後こそ一定の成果を上げたが、中盤以降は政策の看板の掛け替えが続き、2年前に景気後退が始まったころから「アベノミクス」自体が後景に退いた。

 さらに、コロナ禍による打撃を克服する展望を見いだせていないのが現状だ。長期政権にもかかわらず、なぜ「道半ば」を繰り返すだけに終わったのか。丁寧に総括しなければ、後継政権も漂流を続けるだろう。

 安倍政権はまず、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を掲げた。金融政策手法の「異次元」さこそ際だったが、この「3本の矢」自体は不況期の標準的な政策メニューといえる。世界経済の復調という追い風もあり、円高の行き過ぎが修正されて企業業績が回復。雇用も好転し、物価もいったんは上昇基調に乗ったかに見えた。

 だが、ならしてみれば成果は限られる。19年度までの経済成長率は年度平均で実質1%、名目1・6%程度。目標とした実質2%、名目3%の半分に過ぎない。異次元緩和の「出口」でのコストが増す一方、物価上昇率目標の2%には程遠い。

 15年の「新3本の矢」で掲げた名目GDP600兆円、出生率1・8、介護離職ゼロの目標に至っては、出生率が15年から下がり続けているように、実現への道は霧の中だ。

 民主党政権から続く政策では、TPP締結を果たし、2度の消費増税も実現した。ただ前者は米国が脱落し、後者は予定を2度後ろ倒しして財政再建を遅らせたうえ、増税後に景気が腰折れした。

 確かに企業収益の好調と就業者数の拡大が最近まで続いたことは評価すべきだ。だが力強い賃上げと消費の増加には結びつかず、経済の持続的な拡大には至らなかった。「官製春闘」と呼ばれた動きや「働き方改革」も打ち出したが、いずれも中途半端に終わっている。

 財界を支持基盤の柱とする政権の限界であり、「働き手の生活を豊かにする」という視点が薄かったといわざるをえない。

 企業業績の回復を超えたビジョンがなければ、様々な「成長戦略」もスローガンの羅列に終わる。よりよき経済社会とは何か、その実現には何が必要か。コロナ禍と米中対立、巨大IT企業の支配力の高まりといった課題が山積するなかで、議論を深めるべきときだ。

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