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 まだ公には、立候補の意向も政権構想も明らかにしていない菅義偉官房長官に対し、党内の主要派閥がこぞって支持を決めた。次の首相選びを注視する国民など眼中にないかのような、「派閥談合」「密室政治」と批判されても仕方あるまい。

 安倍首相の後継を決める自民党総裁選は、岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長が立候補を正式に表明し、菅氏を加えた3氏による構図が固まった。

 菅氏は無派閥だが、二階俊博幹事長率いる二階派の協力をとりつけ、その後も、首相の出身母体で最大派閥の細田派、ともに第2派閥の麻生派、竹下派と支持を広げている。現在の安倍政権を支える主流派が、トップを安倍氏から菅氏にすげ替えるだけで、権力構造を維持しようとしているとしかみえない。

 近年の自民党総裁選を振り返ると、主立った派閥がそろって勝ち馬に乗ることが珍しくない。小泉首相の後継選びの際は「安倍雪崩」、その安倍首相の後は「福田雪崩」という言葉が言われた。今回もさながら「菅雪崩」の様相である。

 自らの政見を堂々と闘わせるのではなく、主流派に入ってポストを確保することを優先する。そんな寒々しい光景が再び繰り返されようとしている。

 菅氏は国会議員票において、すでに岸田、石破両氏を大きく引き離し、優位にたった。より国民に近いといわれる党員・党友の動向が注目されるが、自民党はきのう、党員投票を省略し、国会議員と都道府県連代表各3人による簡易型で選出する方式を正式に決めた。

 若手を中心に国会議員145人が党員投票を求める署名を提出し、神奈川、大阪など10府県連も実施を求めたが、執行部が押し切った。党内民主主義を軽んじ、現場の声を丁寧にすくい上げようという努力を放棄したというほかない。

 石破氏は一昨年の総裁選で、首相にひとり挑んだ。今回は「納得と共感」をキャッチフレーズに掲げ、立候補の記者会見では「国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」「民主主義が正しく実現される自民党でありたい」と語った。安倍政治の弊害を受け止め、是正をめざす決意がうかがえる。

 一方、前回は首相を支持した岸田氏は会見で、首相の実績を高く評価したうえで、「分断から協調へ」を掲げ、格差問題への取り組みなどを強調した。首相との違いを打ち出すことに腐心しているようにみえる。

 それでは、この政権を官房長官として一貫して支えてきた菅氏は、長期政権の功罪をどう総括し、次の展望を描くのか。菅氏の言葉を早く聞きたい。

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