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 社会保障の機能強化と、少子高齢社会のもとでの制度の持続性・安定性の確保を、どう両立させるのか。誰が首相になっても避けて通れない、日本が直面する重要な課題だ。

 新政権はこの難題を直視し、改革に取り組む必要がある。

 第2次安倍政権は社会保障費抑制策として、生活保護バッシングに乗じた水準引き下げや、所得が一定以上の人の医療・介護の負担増などを進めた。

 一方で、年金の給付を抑える仕組みをデフレの時にも発動するのかなど、多くの国民の反発を受けそうな検討課題は、いずれも先送りしてきた。

 この夏には「給付と負担」の総合的な見直し案をまとめるはずだったが、検討対象になったのは余裕のある75歳以上に医療費2割負担を求める案など限定的。むしろ強調したのは、高齢者の就業拡大を促す方策だ。

 高齢者や女性の働き手が増えて経済が成長すれば、社会保障費を賄える。そんな考え方が色濃く、「給付と負担」の本格的な見直しに取り組む機運は乏しかったと言わざるを得ない。

 この間にも政策課題は山積した。少子化は歯止めがかからず、昨年は出生数が想定より2年早く86万人台まで落ち込んだ。今年4月時点の待機児童数はなお1・2万人を超え、いわゆる「隠れ待機児童」を含めれば潜在需要はさらに多い。

 コロナ禍で、病床削減の対象となっていた病院が患者受け入れの最前線に立ち、地域の医療提供体制のあり方が改めて問われている。雇用の現場では、非正規雇用で働く人たちの解雇・雇い止めなど、厳しい状況が浮き彫りになった。

 そうした問題への対応も含め、社会保障を再構築し、何が暮らしの安心のために必要な給付か、給付の効率化をどこまで進めるのか、財源とセットで考えることが急務だ。

 自民党の総裁選で岸田文雄、石破茂の両氏は、かつての税・社会保障一体改革のような議論の必要性に言及した。しかし菅義偉・新総裁は、高齢者にもなるべく制度の支え手になってもらおうという安倍政権の取り組みを繰り返すだけで、給付と負担の見直しへの明確な姿勢を示していない。

 菅氏がめざす社会像の最初に挙げるのは、「自助」である。それを補うのが社会保険などの助け合いの仕組みである「共助」、セーフティーネットとしての「公助」だと言う説明だが、問題はその「共助」や「公助」の中身である。

 「共助」や「公助」の役割が細る一方というのでは、国民の将来不安はぬぐえない。菅氏は早急にビジョンを示すべきだ。

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