寄り添うヒント、オンラインでも ライブと録画、「自分事」として理解 認知症フレンドリー講座

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 朝日新聞社は認知症についての理解を深め、認知症の人とともに生きる社会を考える「認知症フレンドリー講座」のオンライン配信を始めました。ライブでの配信と、録画した講座をいつでも視聴できるオンデマンド配信があります。講師を実際に派遣して対面で講義をする出張講座も引き続き受け付けています。21日は、世界アルツハイマーデー。認知症についてともに考える機会をつくってみませんか。(坂田一裕)

 認知症フレンドリー講座は、朝日新聞社の創刊140周年記念事業の一つとして、2019年4月にスタートした。これまでに企業や自治体、学校など150カ所以上の研修や授業で開催し、約4千人が受講している。

 講座は、認知症治療の専門医である東京医科歯科大客員教授でメモリークリニックお茶の水の朝田隆院長が監修した。朝田さんによる解説と認知症の本人へのインタビューの動画、認知症の親がいる家族の日々を描くミニムービーなどを交えながら、講師が講義を進めていく。

 認知症の種類や症状、原因、認知症研究の最新情報などの基礎知識を説明し、認知症の人の悩みや気持ちを「自分事」として理解するためのヒントを紹介。どう寄り添ったらいいかを考えるきっかけにしてもらう。

 出張講座では、専用の機器を使って、本社が独自に開発したVR(仮想現実)を視聴し、認知症の人が見ている世界を疑似体験してもらっている。オンラインでは映像の一部を加工して視聴してもらう。

 全90分が標準だが、希望があれば時間や内容は相談に応じる。ライブ配信では、チャットで質疑応答もできる。出張講座とオンラインのライブ配信は団体を対象にしているが、オンデマンド配信は個人での申し込みも可能。

 ■ウィズコロナ考える動画を追加

 オンライン配信の開始に向けて、認知症フレンドリー講座では、ウィズコロナ時代の認知症と介護をテーマにした動画を新たに追加した。デイケアの現場での変化や認知症の人の受け止め方、対策などについて、朝田さんが解説している。

 新型コロナウイルスの流行が認知症の人に与えた影響については、広島大と日本老年医学会が6~7月、認知症治療病棟のある全国の病院や特別養護老人ホームなどの介護施設と、介護支援専門員ケアマネジャー)らを対象にオンラインで調査を実施。945施設と751人から回答を得て、8月に結果を発表した。

 施設の39%、ケアマネの38%が、外出制限などにより認知症の人に症状が悪化するなどの影響があったと答えた。調査をとりまとめた広島大の石井伸弥教授は「本人やご家族から外来で聞いていた悩みが裏付けられ、胸に迫るものがあった」と話す。

 動画の中で朝田さんは、この調査結果に触れるとともに、当事者の「閉じ込めないでほしい」という声を紹介。「3密」を避ける対策をしたうえで、「時間や場所を選んでいっしょに散歩に出かけるなどの工夫が必要」としている。朝田さんは、「これまで経験したことがない時代。本人の話をしっかり聞いて、ともに知恵を出し合っていきたい」と話している。

 ■VR体験で介護への思い新た 高校生40人、授業で受講「うわっリアル」

 新型コロナウイルスの感染拡大のため春以降、開催を見合わせていた対面の認知症フレンドリー講座も、徐々に申し込みを受け付けている。VRの機器は一つひとつ消毒し、講師はマスクとフェースシールド、手袋を着用するなどの対策を講じる。

 兵庫県尼崎市の県立武庫荘総合高校では8月末、県教委が通知した感染防止対策をとりながら、介護を学ぶ福祉探求科の授業で1年生40人が受講した。認知症の人が思いを語るインタビュー動画などを視聴し、「認知症になったとしても、その人の本質が変わるわけではない」などの話に、本人の立場になって考えることの大切さを学んだ。

 後半は、VR機器を使って、一部の認知症の人に現れることがある世界を疑似体験した。内容は、(1)階段が下りづらくなる(2)幻視が起きる(3)自動車の運転が混乱する――の三つ。(1)は空間認識能力が低下して段差がつかみづらくなる状況。(2)の幻視は、主にレビー小体型認知症で特徴的に現れる。(3)は認知機能が低下して、うまく運転できなくなる状態を再現している。

 階段で目がくらんだり、部屋の中に実在しない女の子が出現したりする光景に、生徒たちは「初めて見た」「うわっリアル」などと口々に語っていた。

 桑山希美さん(15)は、「認知症の人全員が同じ状況ではないとわかった。自分の価値観だけで考えず、ご本人を尊重することで、いい関係を築いていきたい」と、感想を述べた。

 同高での講座開催は3年目。担当の山村康彦教諭は、「今年の1年生には、VR体験のような特色ある授業をしているからこの高校を目指したという生徒がいました。話を聞くだけではわかりにくいことを体感し、理解することは、介護従事者になることを意識し、今後の学習や実習に意欲を燃やすきっかけになります」と話していた。

 ■オンライン・出張講座、申し込み受け付け中

 【オンライン配信】

 講師が遠隔地から生中継する「ライブ配信」と、録画した講座をいつでも視聴できる「オンデマンド配信」があります。

 ◆ライブ配信 企業や自治体、学校などの団体が対象です。「YouTubeライブ配信」で視聴できます。価格は30人まで12万円、31人以上は1人当たり1千円が加算されます。

 ◆オンデマンド配信 価格は1人当たり1千円。団体での受講に加え、個人での視聴も可能です。

 【出張講座】

 感染防止対策をして実施します。

 団体が対象。受講時間は90分が標準です。

 価格は、使うVR機器の台数によって、30台まで14万円、31~40台16万5千円です。40台を超える場合はご相談ください。

 別途、参加者1人当たり500円のテキスト代や派遣講師の交通費、機材配送費が必要です。

 ◇価格はいずれも消費税別です。

 【申し込み】

 ◆団体 オンライン配信、出張講座いずれも公式サイト(https://dementiavr.asahi.com/別ウインドウで開きます)の「ご依頼やお見積もり・お問い合わせ」の申し込みフォームでお願いします。

 ◆個人 オンデマンド配信の視聴は、朝日新聞社の動画配信システムで登録が必要です。クレジットカードでのお支払いになります。9月25日以降に専用サイト(http://t.asahi.com/20921別ウインドウで開きます)でお申し込みください。

 【問い合わせ】メール(dementiavr@asahi.comメールする)でお願いします。

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