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 都内で在宅勤務を続ける神谷泰史さん(40)は二つの会社の正社員だ。コニカミノルタでは、新規事業を支援するデザイン戦略部に所属する。平日の夜や休日はデザイン事務所の社員として働く。

 神谷さんは、ユーザーの視点から新しいビジネスを生み出す「デザイン思考」の専門家だ。工学系の大学院を出てから12年勤めたヤマハでは、副業は禁止されていた。コンサルタント会社を経て転職先としてコニカミノルタを選んだ理由のひとつは、副業を認めていたことだった。

 「終身雇用がなくなりつつある時代、いざというときに転職できるように自分の個性を磨いておく必要があります」

 同社は3年前に副業を解禁し、これまでに30~40代を中心に77人が副業を経験している。あまり条件をつけない「自己責任型」が特徴だ。

 健康状態などの相談にのる産業カウンセラーの窓口は設けつつ、働き方は社員の自主性に任せている。人事部の臼井強さんは「若い世代は同じ会社で一生働くことを望んでいません。私たちも社員が自立できるようにサポートしたい」。

 同社のように別の会社と雇用契約を結ぶ形で副業を認めているのは珍しい。ほかの企業では、他社との雇用契約を禁じ、業務を請け負うフリーランス(個人事業主)として副業を認めるケースが多い。副業として働いてくれる人材を募集する大手企業も、ほとんどが個人事業主として受け入れている。

 これには副業先の労働時間を管理する手間などを避けたい企業側の思惑もある。

 厚生労働省は9月、副業についてのガイドラインを改定し、労働者の自己申告にもとづいて通算の労働時間を把握するよう企業に求めた。健康のため長時間労働を抑えることも必要となる。厚労省は申告漏れなどがあっても責任は問わない方針で、企業側にも配慮した。

 労災認定の基準も本業と副業の労働時間を通算して判断するようになった。「過労死ライン」である残業が月80時間を続けて超えるような働かせ方は許されない。

 だが、こうしたルールは労働者向けのもので雇用関係のない人は対象外だ。会社勤めをしながらフリーランスとして働く人の健康管理対策などは十分ではない。

 労働問題にくわしい笠置裕亮弁護士は警鐘を鳴らす。「副業という名の業務請負を増やすガイドラインでは意味がない。働き過ぎや過労死を防ぐには、労働基準監督署が企業に対し、業務請負も含め副業をする人の労働時間をきっちり管理するよう指導すべきだ」。新たな働き方として副業が定着するためには、働き手を支える仕組みづくりが欠かせない。(編集委員・堀篭俊材)

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