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 三井住友信託銀行とみずほ信託銀行において、株主総会の議決権行使書の集計で違法とも捉えられる集計誤りが発覚した。子会社に委託した集計作業で、総会が集中する3月、6月の繁忙期に、郵便局との間で配達方法を調整して1日早く行使書を受け取って集計し、期限最終日の到着分は集計から除外していたのである。それが現場の長年の慣習であり、関係者が当たり前と考えていたというから開いた口が塞がらない。それも、三井住友信託では20年前から、みずほ信託も10年前から続けられていた。影響は上場会社の3分の1の1300社超に及んでおり、市場の信頼は大きく失墜した。

 「コーポレートガバナンス・コード」では、株主の権利と、株主の実質的な平等性の確保を基本原則として規定している。株主総会は会社の最高意思決定機関であり、総会において株主が行使する議決権の有する意味は極めて重い。そのため、集計作業にも最大の注意が図られてしかるべきである。

 信託銀行は、銀行業務や信託業務のほか、企業の株主名簿の管理及び証券代行の業務といった、まさに資本市場のインフラを支える重要な業務を担っている。しかし、今般発覚した議決権行使の扱いでのずさんな対応を放置してきた信託銀行の場合、もはや健全な資本市場の一端を担う資格は全くないと言わざるを得ない。

 わが国の場合、安定株主を擁していて平穏に総会を乗り切れるため、少数株主軽視の風潮が染みついていたのではないか。その点、今般発覚の不祥事が、物言う株主からの問い掛けにあったということは皮肉なことであるが、この際全ての市場関係者は謙虚に足元を見つめ直すべきである。(惻隠)

 ◆この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。

<訂正して、おわびします> 

▼3日付金融情報面「経済気象台 信託銀行の大罪」の記事で、「三井信託」とあるのは「三井住友信託」の誤りでした。