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 日米関係を安定的に維持するためにも、納税者たる国民の理解は欠かせない。日本政府は長期的な視野に立ち、腰を据えて交渉に臨んでほしい。

 在日米軍の駐留経費の負担を定める特別協定の更新に向け、日米両政府の事前協議が始まった。日本人基地従業員の給与や光熱水料、訓練移転費などを日本側が担う、いわゆる「思いやり予算」である。

 日米地位協定によれば、駐留経費は米側が負担するのが原則だ。しかし1970年代後半から、日本の物価上昇や米国の財政赤字を背景に、日本側が一部を肩代わりするようになり、その範囲は拡大を続けている。

 来年3月で5年間の期限が切れる現行協定では、日本側の負担は年約2千億円。これから5年分の枠組みを決める交渉は、年末の予算編成までに合意し、来年3月までに国会承認を得る段取りだ。しかし今回は、11月の米大統領選で共和党のトランプ氏が再選されるか否かで、交渉の行方が大きく変わる。

 トランプ氏はかねて同盟国に米軍駐留経費の大幅増を求めてきた。ボルトン前大統領補佐官の回顧録によれば、日本には年80億ドル(約8500億円)を求める考えを持っていたという。交渉を有利に進めるため、米軍を撤退させると脅す考えも示したとされる。理不尽な姿勢は、とうてい受け入れられない。

 昨秋から続く米韓交渉も、米国が昨年の負担の5倍以上となる年50億ドル(約5260億円)を求め、妥結の見通しが立たないまま膠着(こうちゃく)状態に陥っている。

 米民主党は、こうした法外な要求に批判的で、バイデン前副大統領が当選すれば、交渉方針が変わる可能性がある。だとしても、年明けの就任までは本格協議に入りにくく、予算編成に間に合わない恐れがある。

 このため日本政府内には、現行協定を暫定的に1年延長し、本格的な改定交渉は来年度に先送りする案も浮かんでいる。検討に値する現実的な選択肢といえよう。06年の改定に際し、在日米軍再編を理由に2年の暫定合意を結んだ例もある。

 日本は特別協定分以外にも、米軍再編経費などを負担しており、在日米軍関係費の総額は計約6千億円にのぼる。加えて安倍前政権下では米国製兵器の大量購入が進み、宇宙・サイバー・電磁波といった新分野への対応も重みを増しつつある。

 肝要なのは、地域情勢や財政事情について認識を共有し、日米の役割分担を再確認することだ。基地周辺の住民の不安と向きあう方策も探るべきだろう。そのことを通じて、幅広い国民の理解の上にたつ、持続可能な同盟像を描かねばならない。