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 カジノを含む統合型リゾート(IR)について、政府は、来年1~7月に予定していた自治体からの申請期間を9カ月延期すると発表した。運営事業者を選定する基準などを示した「基本方針案」の中に盛り込んだ。コロナ禍による自治体の作業の遅れに配慮したという。

 これに伴い、20年代半ばとされた開業の時期は遅れる可能性が出てきた。日程以外でも構想の前提となる状況が変わっているのに、政府は推進の旗を振り続ける。到底理解できない。

 安倍前政権はIR整備を成長戦略の目玉と位置づけてきた。施設の核としてカジノを設け、海外から観光客を呼び込んで、お金を使ってもらおうというもくろみだった。

 ところがコロナ禍で国境を越えた人の動きは大幅に制限された。欧米などのカジノ業者は一時営業停止となり、業績の回復は遠い。日本への投資意欲が戻るか、疑問は尽きない。

 菅首相は前政権時代に、全閣僚でつくるIR推進本部の副本部長を務めた。観光政策にも熱心で、首相就任時の記者会見でも、自身が手がけたインバウンド効果を誇ってみせた。

 だが情勢は一変した。外国人頼みの観光政策の危うさを突きつけられ、業界は訪日客の回復を期待しつつも、より地に足のついた新たな事業展開を探り始めている。政府は現実を直視して、カジノ抜きの振興策を練り直す機会とするべきだ。

 住民に歓迎され、地域の将来を切り開く施策は何か。IR誘致をめざしてきた自治体も、立ち止まって再考するときだ。

 本来、基本方針は1月にも決まるはずだったが、秋元司衆院議員がIR事業をめぐる汚職の疑いで逮捕・起訴されたため作業は中断。昨秋に出した案を修正したものが、先々週になってようやく公表された。

 事件を受けて今回の案には、国や自治体の職員が業者と接触する際は記録を残すなどのルールが盛り込まれた。懸案のギャンブル依存症対策に関しては、業者や自治体に「万全」を尽くすことを求める項目が設けられた。だが、具体的に何をどうするかは現場任せだ。

 カジノには依存症の他にも、反社会的勢力が入りこんでくるなどの危惧がつきまとう。しかし前政権は、日本維新の会の協力を取りつけ、カジノ関連の法案の採決を16年12月と18年7月の2度にわたって強行。わずかな審議時間で成立させた。

 菅政権になって初の国会が近く召集される。積み残された課題、新たに発生した問題。カジノをめぐって議論すべきテーマは山積している。与野党で実りある論戦を交わすべきだ。

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