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 性的少数者の尊厳を根本から否定する暴言だった。

 東京都足立区議が「同性愛者が法律で守られると区が滅んでしまう」と、9月下旬の本会議で発言した。抗議を受け、先日ようやく撤回・謝罪した。

 偏見に基づく公人の発言は、LGBTなど性的少数者への差別を禁じる法制度の必要性を、強く印象づける結果となった。

 こうした人々は人口の3~8%にのぼるとの調査がある。法整備は遅れているが、同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」の導入は近年急速に広がる。支援団体によると、60自治体が導入、12が検討中だという。これらの自治体の住民の数を合わせると全国の約3分の1にあたる。

 都道府県で初めてこの制度を導入した茨城県は、同性パートナーのいる県職員を異性婚と同じ福利厚生措置の対象とし、鳥取県も7月、同性カップルに扶養手当の支給や介護休暇の取得などを認めると決めた。東京都世田谷区は、新型コロナの感染者が死亡した場合、遺族が受け取れる傷病手当金を同性パートナーも申請できるようにした。

 問題は、こうした施策の必要性が国レベルで把握されていないことだ。日本学術会議の17年の提言によると、性的少数者に関する調査や統計は限られ、研究者やNPO法人によるものがほとんどだ。提言は、政策課題を明確にするため、継続的・包括的な公的調査に取り組み、公表するように促している。

 5年に1度の国勢調査は貴重な機会になり得るはずだった。だが世帯主との続き柄の選択肢は、配偶者、子、兄弟姉妹などの親族と、「住み込みの雇人(やといにん)」「その他」しかなかった。

 総務省によると、同性間で配偶関係にあるとの回答があったとき、他の回答から誤記入とみられる場合は性別などを修正し、同性パートナーの可能性があると認められる場合は、続き柄を「他の親族」に変更する処理をしているという。

 これでは、おじ、おば、いとこなどと同じになってしまい、世帯を同じくする同性カップルの数は見えてこない。

 性的少数者の団体は、回答どおりに集計し、同性カップル世帯数として発表することを総務省などに要請する運動を進め、賛同する自治体もある。

 プライバシーが漏れるのを恐れて回答しない当事者がいることも予想され、正確な数字をとらえるのは困難だ。だが少なくとも、こうした修正が何件あったかを公表し、調査手法の改善に生かしていくべきだ。

 実態を知ることが理解を深め、社会を動かす。少数者の存在にしっかり目を向けたい。