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 質問に正面から答えず、用意された答弁の棒読みを繰り返す。官房長官や事務方が助け舟を出すように、説明を肩代わりする。これでは一問一答形式になっても、核心に迫る議論にはならない。

 菅政権発足後初めての予算委員会が衆院で始まった。野党議員がそろって追及したのが日本学術会議の人事問題である。政府からの独立性・中立性が脅かされ、学問の自由にもかかわる重大なテーマだ。菅政権の強権的な体質の表れとの指摘もある。一方通行の代表質問では詰め切れなかった矛盾をただそうというのは当然だ。

 しかし、学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した理由について、菅首相の口から納得のいく説明はなかった。「総合的・俯瞰(ふかん)的な活動」を実現するためで、年齢や出身、大学などの「多様性」の確保が念頭にあったと繰り返した。「閉鎖的で既得権益のようになっている」との学術会議批判も飛び出した。

 しかし、6人の除外が、むしろ多様性に反すると指摘されると、個別の人事については「答えは差し控える」の一点張り。一方で、特定秘密保護法や安保法などに反対したことが理由ではないかと問われると、「あり得ない」と否定した。

 首相はまた、105人の推薦名簿を見ていないことを改めて認めた。任命を拒んだ6人のうち5人は名前も知らず、著作などを読んだこともなかったという。ならば、誰がどんな狙いでこの6人を選んだのか。

 安倍前政権時代から学術会議の人事への介入にかかわってきたとされる杉田和博官房副長官から直接事情を聴く必要性が高まったといえる。

 会員選考が選挙から推薦制になった当時の中曽根康弘首相は国会で「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁した。推薦主体が各学会から会員に変わった際の政府資料にも「首相が任命を拒否することは想定されていない」とあった。ところが2年前、前政権が「首相が推薦通りに任命する義務はない」との法解釈の文書をつくり、内閣法制局に確認させたのが今回の人事への布石となった。

 政府がいくら否定しても、国会への説明もなく、法解釈を事実上変更したに等しい。法治国家の安定性を損なう行為を立法府が見逃していいわけがない。

 自民党は首相への援護射撃のように、学術会議のあり方論へのすり替えに躍起だが、与野党の別のない行政監視の重い責務を自覚するなら、実態解明にこそ力を入れるべきだ。まずは、これ以上、杉田氏の予算委出席を拒み続けてはいけない。

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