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 東北電力の女川原子力発電所2号機について、再稼働に向けた「地元同意」を、宮城県の村井嘉浩知事がきょうにも表明する見通しだ。東日本大震災で被災した原発としては初の再稼働手続きである。なぜそれほど急ぐのか。疑問がぬぐえない。

 東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉の女川原発は震災で、原子炉建屋の地盤まで80センチに迫る高さ13メートルの津波に見舞われ、2号機を冷やす設備が浸水するなど重大事故寸前だった。東北電は、津波の想定を23・1メートルに引き上げ、耐震性も高めることにした。

 原子力規制委員会の6年余りの審査を経て、新規制基準に適合すると認められたのが今年2月末。直後に資源エネルギー庁長官が県を訪れて再稼働に同意するよう要請した。4月、東北電は、規制委の審査で必要になった追加の安全対策に時間がかかるとして、工事完了が予定より2年遅い2022年度内にずれ込むと発表したが、同意への流れは止まらなかった。

 原発がある2市町のうち女川町では9月、町議会が再稼働に賛成する陳情を採択。もう一つの石巻市は半月後、市長が再稼働に同意する考えを表明した。県議会も10月、再稼働賛成の請願を採択する形で早期の再稼働を「容認」。村井知事はおととい、県内の全市町村長の意見を聴く会も開いた。

 地元が再稼働への同意に傾くのは、地域経済と原発の結びつきが強い面があるからだろう。しかし、県内には不安の声も根強く残る。

 女川原発は牡鹿(おしか)半島の付け根近くにあり、万一の際には、半島の住民の多くが原発近くを通る道路で避難することになる。津波などに襲われれば、海岸近くでは通行できなくなる恐れもある。実際、昨年の台風19号では主要道路が冠水するなどして17時間、通行できなくなった。

 避難道路の整備が課題として残っていることは、政府や東北電も認める。地元は国道バイパスの整備などを県や政府に要望しているが、予算化の見通しは立っていない。

 菅首相は今国会で「しっかりとした避難計画のない中で、再稼働が実態として進むことはない」と答弁した。ならば今の女川も、再稼働の手続きを進められるはずがない。工事完了までの2年間に、実効性ある避難計画を作り上げるのが先決だ。

 女川2号機の安全工事費は共用施設も含め3400億円と、すでに再稼働した原発より1基当たり1千億円以上かかると見積もられている。プレート境界付近にあり、地震や津波のリスクが高いためだ。この事実からも目をそらすべきではない。

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