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 前国会から継続になっていた種苗法改正案が審議入りした。

 近年、日本の研究機関が数十年かけて開発した高級ブドウやサクランボなどの種苗が海外に流出し、アジアなどで格安で販売される事例が相次いでいる。

 平昌冬季五輪では、日本の品種をもとに開発したとされる韓国のイチゴをカーリング女子日本代表の選手が食べ、「びっくりするほどおいしい」と発言。優良品種の海外流出の深刻さが注目される契機となった。

 人口減が進むなか、日本の農業の生産基盤を維持するための有力な選択肢として、政府は輸出を後押ししている。長い時間と資金をかけて開発した品種は知的財産であり、一刻も早く流出防止策をとることが求められている。

 政府はこれまでも補助金を出して、開発者による海外での品種登録を支援してきた。だが、登録をしても、海外の権利侵害を見つけ出し、法的に争うことは容易ではない。

 そこで、海外流出自体を防ごうとするのが今回の法案だ。

 開発者が種苗の利用を国内に限定できるようにし、海外に持ち出せなくする。農家が自らの栽培のために枝分けなどで種苗をつくる「自家増殖」をする際には、事前に開発者の許諾をとることを求め、種苗の管理を強化する。出元を特定しやすくなり、改正法が施行されれば、海外流出に一定の歯止めがかかるであろう。

 ただ、一部の農家からは「許諾料が高騰すれば負担が重くなる」と心配する声が出ている。おとといの審議では、立憲民主党や共産党の議員から、法改正に反対する意見が出た。

 だが規制の対象になるのは、比較的最近になって開発された「登録品種」だけだ。全体の9割を占めるとされる通常の品種は従来通り、農家が自家増殖できる。政府は、農家が使っている登録品種の多くは国や自治体の研究機関が開発したもので、高額の許諾料をとることはない、とも説明している。

 それでも農家の懸念は払拭(ふっしょく)する必要がある。許諾料が過度な負担になっていないか、政府が監視し、必要に応じて対策をとるべきだ。

 優良品種の開発は、日本の農業の国際競争力につながる。地球温暖化が進み、農家からは高温や病害虫に強い新品種へのニーズも高まっている。

 世界では品種開発の動きが加速しているのに対し、日本では過去10年ほど出願件数が減少傾向にある。適正な許諾料で開発費を回収する仕組みは、長期的には農家にとってもプラスになる。そのことにも目を配らねばならない。