(社説)米国と温暖化 協定復帰で対策加速を

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 地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定から米国が正式に離脱した。しかし、バイデン次期大統領は「来年1月の就任後ただちにパリ協定に復帰する」との意向を示している。

 米国が温室効果ガス削減の責任を放棄したままでは、気候危機の回避はままならない。バイデン次期政権がトランプ時代の自国第一主義を改め、脱炭素をめざす国際協調の場に戻ってくることを歓迎したい。

 産業革命以降、世界の平均気温は1度も上がった。現状のままでは上昇幅は今世紀末に3度を超え、異常気象自然災害の被害が深刻化してしまう。

 危機を回避するには気温上昇を1・5度に抑えねばならず、それには2050年までに温室効果ガスの排出量を、森林などによる吸収分を差し引いた実質でゼロにする必要がある。190近い国・地域がパリ協定を結び、排出削減に努めているのはこのためだ。

 ところがトランプ氏は大統領に就任した17年、協定からの離脱を表明。昨年11月に国連に通告して準備を進め、1年たったため正式に離脱した。

 トランプ氏が温暖化対策に後ろ向きなのは、排出削減を進めることで自国の経済が打撃を被ることを嫌っているからだ。パリ協定離脱を表明した際には中国やインドを名指しして、「米国にとって最大級に不公平な内容だ」と訴えた。

 どれも身勝手な言い分で、大国のリーダーとしての自覚に著しく欠けるものである。

 そもそも米国は、現時点の排出量が中国に次いで多いだけでなく、過去に出してきた二酸化炭素の総量が他の国々を大きく上回っている。率先して排出削減に努めるべき立場にあるのは疑いようもない。

 バイデン氏は、そうした責任を自覚しているのであろう。大統領選で気候変動対策を公約の一つに掲げた。新政権のもと、米国は再び脱炭素化へ動き出すことになる。

 実は、トランプ政権下のいまも「私たちはまだパリ協定にいる」を合言葉に、対策に取り組む自治体や企業は多い。たとえば、カリフォルニア州は35年以降、新車販売を排ガスが出ない電気自動車などに限定するし、アップルやマイクロソフトなどは全電力を再生可能エネルギーでまかなうとしている。

 折しも、国際社会では気候変動への危機感が募り、120カ国以上が「50年に実質排出ゼロ」を宣言している。つい最近も、中国が60年までに、日本と韓国が50年までに、それぞれ実質ゼロをめざすと表明した。

 米国の協定復帰で、世界の脱炭素化が加速するよう願う。

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