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 日本学術会議は独立して職務を行う――。そう定める日本学術会議法に反しかねない、少なくともその精神をないがしろにする行いだ。会員の任命拒否問題に続き、菅政権の強権的な体質を示す国会答弁があった。

 質問したのは自民党議員だ。17日の参院内閣委員会で、大学などの研究機関は軍事研究に携わるべきではないとの立場をとる同会議を攻撃し、今後の改革論議の中でこの問題を取りあげるよう迫った。これに井上信治科学技術担当相は「梶田隆章会長と話をしている」「会議自身の検討を待っているが、しっかり意見交換をしながら取り組んでいきたい」と答えた。

 3日後の会見で井上氏は「見直しを要請したわけではない」としつつ、「デュアルユースについても冷静に考えなければいけないのではないかという考えを述べた」と明らかにした。この状況下で大臣がそう言えば、見解の変更を迫ったと受け止めるのが当然ではないか。

 研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」は科学技術の宿命だ。科学者の発明や発見は快適で便利な生活をもたらした半面、毒ガス、生物兵器、核兵器などをつくり出した。国内外を問わず、意に反して動員され戦争に協力させられた研究者も大勢いる。

 その反省に立ち、あらかじめ歯止めをかけようと学術会議は1950年と67年に「軍事目的の研究は行わない」と表明。3年前にも「これを継承する」との声明を出した。政府は大学の補助金を削る一方、兵器などの開発につながる研究に多額の資金を支給し、管理する制度を広げていた。危機感をもった同会議が安全保障の重要性も含め、多角的に「冷静に」議論を重ねてまとめたものだった。

 声明に研究機関や個人の行動を縛る力はないが、政府・自民党は反発し、虚偽や誇張も交えて学術会議を批判してきた。

 任命拒否は人事で学術会議をゆさぶり、政権の考えに沿う組織に変えていこうとする意思の表れと見ることができる。さらに踏みこんで個別の活動にまで介入する構えをのぞかせたのが、今回の大臣答弁だ。

 学問研究が政治の統制下におかれ、国を危うくした過去を踏まえて、学問の自由を保障した憲法のもと、先人は特別な機関として日本学術会議を設け、職務の独立の重要性を法律にうたった。歴史に学ばなければ同じ轍(てつ)を踏むことになる。

 あす衆参の予算委員会で首相も出席して集中審議がある。コロナ禍で注目度が下がった感のある学術会議問題だが、解明すべきこと、追及しなければならない問題は山積している。

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