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 いったん決めた方針にこだわり、事態を悪化させてから慌てて次の手を打つ。まさに「失敗の本質」を見るようだ。

 政府はきのうの新型コロナ対策本部で「Go To 事業」のさらなる見直しを決めた。先週末に、感染拡大地域を目的地とする旅行を事業の対象から除外することを表明したが、「出発地」とする旅行についても、利用を控える措置をとることにした。大阪市と札幌市に直ちに呼びかけるという。

 感染症などの専門家でつくる政府の分科会が、25日にトラベル事業の一時停止を提言していた。だが政府は応じず、おととい取材に応じた菅首相は、同事業に関する記者の質問から逃げるように立ち去っていた。

 所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と表明しながら、首相は経済活動の維持に軸足を置いてきた。難しい判断であるのはわかる。だが、感染拡大の兆しを見つけたらまずは封じ込めを優先し、状況が落ち着いてから少しずつ活動を再開する。それが結果として経済にも好影響を与える。春と夏の感染拡大で学んだ反省や教訓が生かされているとは思えない。

 専門家との対話不全だけではない。この間、政府と一部の知事との間で責任を押しつけ合うような姿を目の当たりにしてきた。密接な連携が求められる時に混迷は深まるばかりだ。

 いま政府・自治体が最善を尽くさねばならないのは「医療崩壊」を食い止めることだ。

 第3波とされる現在の流行では重症者の増加が顕著だ。医療従事者が不足して、コロナ以外の病気の治療にも支障が出る寸前にきている。政府、自治体、医療界が協力し、対応可能な病院から従事者を応援派遣するなどの調整を急ぐべきだ。

 入院先にどの程度の余裕があるか、その実態が把握できていない恐れも指摘されている。

 確保する見込みのある病床数を分母に、利用されている数を分子にして占有率を出し、逼迫(ひっぱく)度を判断する指標としている。

 だが患者を受け入れるには、あらかじめスタッフの配置や勤務を見直す必要があり、準備に時間がかかる。見かけ上の占有率をもとに議論していると、現実との間に齟齬(そご)が生まれてしまう。正確な状況がわかって初めて、適切な対策が打てる。足元のデータの確認と共有を進めなければならない。

 医療現場で働く人への心ない仕打ちが後を絶たず、離職者の増加が懸念されるのも深刻な問題だ。命を守る人たちを孤立させ追い詰めた先にあるのは、社会そのものの崩壊である。医療機関への支援と従事者の待遇の充実は、待ったなしの課題だ。

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