(社説)給付金の「謎」 統計の不備、見直しを

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 政府の統計への信頼を傷つけるような事態が起きている。

 コロナ禍で収入が急減した中小企業と個人事業主に最大200万円を支払う持続化給付金の給付件数が、説明できないほど増えているのだ。

 中小企業庁によると、中小企業と個人事業主の数は計358万。総務省などがすべての企業・事業所を調べる「経済センサス」をもとに算出した数字だ。

 給付の条件は「コロナ禍で、いずれかの月に収入が前年比で半減以上に落ち込んだ」ことである。東京商工リサーチのアンケートによると、半減以上に落ちた中小企業の割合は、最も高かった5月でも20%だった。

 給付金は1度しか受け取れない。中企庁は当初、給付は150万~200万件と見積もり、予算計上していた。

 ところが11月23日時点で既に380万件、申請は400万件にのぼり、企業・事業主数を上回る。申請は来年1月まで受け付けるため、件数が更に増えるのは確実だ。

 想定外の事態に予算は3度も増額され、いまでは5・5兆円と防衛予算に匹敵する。なぜこれほど膨らんだのか、政府は明らかにする必要がある。

 原因としてまず考えられるのは、給付対象となる農林水産業が中企庁の統計には含まれていないことだ。農林水産省の統計によると、これらは130万強ある。ただ農林水産業を含めても、受給した企業・事業主の割合は8割近くにのぼる。これほどの高率になるのは、やはり不自然と言わざるを得ない。

 全国で摘発が相次ぐ不正受給も一因だろう。中企庁に寄せられた自主返還の申し出だけでも9千件ある。給付金は支給のスピードを最優先し、収入を確認する書類などの審査を緩くした。政府は粘り強く不正の調査を続けるべきだ。

 しかしそれでも疑問は残る。関係者の間では、経済センサスの企業・事業所数の精度の低さも大きな原因とみられている。センサスは事業所を実地で確認するが、看板や表札が掲げられていなければ、調査員は存在を把握できないためだ。

 センサスは国内総生産(GDP)の推計にも使われる。大きな捕捉漏れがあれば、統計上の経済の規模が、実態よりも小さくなりかねない。

 総務省は国税庁と連携して、捕捉漏れを埋める取り組みを進めているが、コロナ禍を機に、ネットを通じて食品配達など単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」や副業をする人など、新しい働き方が広がっている。実情を正確に把握するため、社会の変化にあわせた調査方法の不断の見直しが求められる。