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 遅すぎるうえ、中身も不十分にすぎる。観光支援策「Go To トラベル」の東京都をめぐる見直しである。

 菅首相と小池百合子東京都知事がおととい会談し、65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人に、都内発着分の利用を一時自粛するよう呼びかけることで合意したという。

 都内の病院では、新型コロナウイルス感染による重症患者が急増し、現場からは「もはや医療崩壊が目の前だ」との悲鳴にも似た声があがっている。感染拡大防止に一刻の猶予も無い。

 にもかかわらず、政府と都は互いに責任を押し付け合うばかり。政府の分科会がトラベル事業の運用の早急な見直しを11月20日に提言してから、1週間以上も浪費した。

 緊急事態宣言時の休業要請の範囲をめぐって対立して以来続く、コミュニケーションの不全である。国も都も、責任の重さを自覚すべきだ。

 迷走の末に決まった見直しだが、その内容は、とても国民が安心できるものではない。

 足元では、外出の機会が多い人がウイルスを家庭に持ち込み、世代を超えて感染するケースが目立ってきている。もともと慎重な行動を呼びかけてきた高齢者や基礎疾患がある人だけに、改めて自粛を求めても、感染拡大への不安は拭えない。

 トラベル事業で繰り返される泥縄式の対応から危惧されるのは、菅政権が経済活動の維持を優先するあまり、感染防止がおろそかになっているのではないかという点だ。

 国民の命を守る上でも、経済活動が重要であることに異論は無い。だが、このまま感染の急増が続けば、強い感染防止対策で経済活動に急ブレーキをかけざるをえなくなる。長い目で見れば、経済活動を継続するためにも、感染拡大の抑制を優先すべき局面があることを、政府は肝に銘じなければならない。

 大阪市と札幌市では既に、すべての人を対象に、トラベル事業を停止または自粛することにした。しかし東京について、中途半端な見直しを決めるのにこれほど時間を要するようでは、事業の大前提だった「感染状況を踏まえた臨機応変の対応」は実行できないのではないか、との疑念が高まる。

 政府は来週にもまとめる追加経済対策で、トラベル事業を5月の大型連休後まで延長する方針だ。だが、大前提が崩れたままでは延長は認められない。状況に応じて柔軟に対処できるよう、事業の仕組みを抜本的に見直す必要がある。それが無理なら、旅行業者に直接、資金援助することなども含め、支援策を検討し直すほかない。

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