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 国民の皆さんと危機感を共有したい――。内閣で新型コロナ対策を担当する西村康稔氏はきのう、政府の分科会終了後の会見で繰り返しそう述べた。

 だが誰よりも危機感を共有すべきは、政府の最高責任者である菅首相その人ではないか。

 これまで社説は、感染症の専門家や医療従事者たちと、経済活動を優先する政権との間の認識の乖離(かいり)を指摘し、それが埋まるどころか秋以降広がっていることへの懸念を表明してきた。その思いはいよいよ深い。

 分科会は、4段階の警戒レベルの上から2番目のステージ3に当たる地域について、「Go To事業」を一時停止することなどを提言した。これまでも同様の要請をしてきたが、他の感染対策も含め、よりきめ細かで具体的な内容を打ち出した。

 ところが政府は同じ日に事業費の拡大を閣議決定し、インターネット番組に出演した首相は、一時停止について「まだそこは考えてません」と答えた。自治体との今後の調整に含みは持たせたものの、自身肝いりの事業への執着を見せた。

 各地で病床、人手とも逼迫(ひっぱく)し、一部では通常の医療にも影響が出ている。日本の強みとされてきた保健所による感染経路の解明も困難になっている。

 こうした現場の負担を少しでも軽くし、国民の生命と健康を守るためにいま最優先で取り組むべきは、感染拡大を抑えることだ。「Go To事業」を推進している状況ではない。

 政府が税金を使って旅行や会食を奨励する一方で、不要不急の外出の自粛を要請したり在宅勤務を呼びかけたりしても、国民の胸に届くはずがない。むしろ、指標はステージ3相当の前でも悪化する兆しを認めたら早めに手を打つことこそ、各国が試行錯誤しながら積み上げてきたコロナ対策の教訓だ。

 分科会はあわせて、「年末年始を静かに過ごす」ことを人々に訴えた。すでに多くの知事が、帰省の分散や自粛を呼びかけていることと呼応する。

 この時期は病院や診療所の多くが休み態勢に入り、保健所を含む役所の業務も縮小される。各地で治療が受けられない、搬送先が見つからないといった事態が起きかねない。人が活発に動けば、その後の流行がさらに深刻化する恐れもある。

 ここでも分科会任せ、知事任せにせず、首相から明確なメッセージを出す必要がある。

 政府が集中的にコロナ対策を講じる期間と位置づけた「勝負の3週間」が間もなく終わるが、状況は厳しい。「迅速に、合理的な判断を」。分科会の尾身茂会長のきのうの発言を、政府は真剣に受け止めるべきだ。

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