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 医療現場の一部は既に崩壊の危機に瀕(ひん)している。遅きに失した判断と言わざるを得ない。中止を求める専門家らの声を無視し、事業を続けてきた菅政権の責任は、極めて重い。

 政府はおととい、観光支援策「Go To トラベル」を28日から来年1月11日の間、全国で一斉停止すると決めた。

 政府が「勝負の3週間」と位置づけた期間が終わろうとしているが、街を行き交う人の流れに大きな変化は見られず、感染拡大に歯止めはかかっていない。政府が補助金で旅行を奨励しながら危機を訴えても、国民に響かないのは当然だ。

 菅政権はこれまで、感染拡大防止よりも経済活動の維持に軸足を置いてきた。しかし第3波とされる流行が一向に収まらない今は、政策の優先順位を見直すべきだ。長い目で見れば、それが本格的な経済回復にとっても近道なのではないか。

 もとより、感染拡大は「Go To」の一斉停止だけで防げるものではない。現在の感染状況の認識、これまでの取り組みの評価、今後の見通しととるべき対策。こうしたことを分かりやすく説明し、幅広い国民の協力を仰ぐことが、何より政府には求められる。

 ところが、一斉停止を決めた後も、菅首相は事業見直しについて説明するための記者会見を開かず、官邸で立ち止まって「年末年始は集中的に対策を講じられるべき時期と思った」などと語っただけだ。

 多くの病院や診療所が休む年末年始は、医療が手薄になる。28日から一斉停止をしても、この時期の感染者数の増加を抑える効果は乏しい。政府は、できるだけ早く旅行を含む移動の抑制を呼びかけ、そのための手当てを用意しなければならない。

 見過ごせないのは、1月12日以降は「常識的に考えれば、医療状況が逼迫(ひっぱく)していない地域は元に戻される」とする赤羽一嘉国土交通相の発言だ。

 感染状況に応じて、地域ごとに事業を制限するといっても、自治体との調整には時間がかかる。観光業者もキャンセルの対応に膨大な手間を強いられる。泥縄式の対応が続く半年間の経緯で明確になったのは、先行きが読めないコロナ禍への対策として、「Go To」は不適切な仕組みであることだ。

 政府はもともとこの事業を「感染拡大が収束した後」に行うことにしていた。当初の原則に立ち返る必要がある。

 東京や大阪など多くの自治体で、飲食店への営業時間の短縮要請も続いており、事業者には協力金が払われる。苦境にある旅行業界への支援も、直接的な助成などを考えるべきだ。

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