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 一人ひとりの尊厳が守られ、男女の性別に関係なく平等に遇される社会。その実現をめざして努力してきた多くの人の思いを踏みにじる行いだ。

 選択的夫婦別姓(別氏)をめぐる自民党の対応である。政府が近く策定する「第5次男女共同参画基本計画」が同党の意向で書き換えられ、大幅に後退する内容になりそうだ。

 00年に作られた最初の基本計画から15年の第4次計画まで、具体的な施策や取り組みとして「選択的夫婦別氏制度」が明記されてきた。今回、内閣府は従来の「検討を進める」から「必要な対応を進める」に一歩踏みこむ原案を提示した。

 これに伝統的家族観の護持を掲げる自民党議員らが反発。導入にブレーキをかける文言を書きこませ、記載を「更なる検討を進める」に押し戻したうえ、あろうことか「夫婦別氏」という言葉まで削らせてしまった。

 人権感覚のなさと時代錯誤ぶりにあきれるばかりだ。

 法律で夫婦同姓を義務づける国は日本くらいとされ、96%の夫婦で女性が男性の姓に改めている。明治以降定着した制度として積極的に受け止める人がいる一方、改姓に伴う不利益や不便、アイデンティティーの喪失感に苦しむ人も少なくない。女性の社会進出とともに、選択的夫婦別姓制度を求める声が高まったのは当然といえる。

 内閣府の世論調査でも「法律を改めてもかまわない」と答える人が増え、17年調査では42・5%と、「改める必要はない」の29・3%を大きく上回った。

 自民党の動きはこうした国民の声に背を向けるものだ。このままでは第5次計画は、改姓を強いられる人たちの痛みを無視し、社会の流れからも乖離(かいり)したものになってしまう。

 反対派は、別姓を導入すると家族の絆が失われ、子に悪影響が及ぶと唱える。だが事実婚でそれぞれの姓を名乗り、子どもとも良好な関係を築いている家庭はたくさんある。現実を見たうえでの主張なのだろうか。

 旧姓を利用しやすくして問題の解決を図る考えもあるが、国家資格など戸籍上の姓の使用を求められる場面は多い。二つの姓を使い分ける負担は重く、代替策にはなり得ない。

 残念なのは、別姓の導入に前向きな発言をしていた菅首相や上川陽子法相が、この事態に静観を決めこんでいることだ。

 11月の参院予算委員会で別姓への考えを問われた首相は「政治家として申し上げてきたことには責任があると思う」と答弁した。今後その「責任」をどう果たすのか。人々の苦悩と社会の要請に耳を澄ませば、答えはおのずと見えてくるはずだ。

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