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 外で思い切り体を動かし、友達と楽しく遊ぶことは、子どもの心や体の健康や成長のために大切です。新型コロナウイルスの第3波の感染が拡大する中で、どんなことに気をつければいいのでしょうか。春に緊急事態制限が出された時とその後の経験から、悩んだことや気づいたことを子どもたちや専門家に聞き、2回にわたって紹介します。

 ■保育園行けず、太った息子/人と触れ合えず、成長心配 子育て中の記者は

 息子(3)は緊急事態宣言中に1キロ近く体重が増えました。保育園から登園自粛要請が出て、家から出ない日も。「コロナ太り」でした。

 巣ごもりによるストレスなのか、言うことも聞かなくなりました。外でつないだ手を振り払う。「まだ帰らない」と泣いて暴れる。息子に対する私の怒りの「沸点」も日に日に低くなっていく。悪循環でした。幼児を育てる周囲の母親たちからは、子が体力を持て余して就寝時間が遅くなり、生活のリズムが崩れたという話をいくつも聞きました。

 6月に保育園に通えるようになって、息子の体重は落ちました。毎日の散歩は大人の足で10~15分ほどかかる公園へ。ただし、感染予防のため遊具には触れない決まりで、鬼ごっこや草木を使ってままごとをしているそうです。

 泥遊びや火おこしなどを楽しめる「プレーパーク」や児童館、子育てひろばは今も人数、時間の制限や飲食禁止のところが数多くあります。遊び場がコロナ前にすっかり戻ったとは言えません。

 全国の感染者数が過去最多を更新していますが、外遊びは思う存分にさせてあげたい。コロナ太りしていた息子の顔とあの頃の我が家の荒れ具合を思い返し、考えています。(金島淑華)

     ◇

 緊急事態宣言が出た今春、5歳の長男、3歳の長女と公園で遊んでいると、行政職員にこう言われました。「密集しないで」「長くいないで」。公園にいることを非難する近隣の声も耳に入り、私は公園の周囲を歩く人や、取り囲む民家からの視線が気になりました。

 こだわりが強い長男は、ささいなことで怒り、同級生の遊びのルールに合わせられず輪に加われないことがあります。発達のことが気になるので、専門家に相談する予定です。

 子どもが集団の中でけんかし、謝り許す経験は大切だと、教育の専門家は話します。霊長類の研究者は「人間は、他者と付き合うスキルを、人と関わる中で自然と学ぶ」と言います。人との触れ合いが制限される今、子どもや若者の成長に悪影響が出ないか心配です。

 人が集団で遊ぶ姿を見て、新型コロナウイルスの感染拡大が心配になる人もいるでしょう。ただ私は、人と接する場が減り、対人関係を学べないことのほうが、子どもや若者にとって大きなリスクだと考えます。

 感染の可能性をゼロにすることはできません。室内や大多数が密になる条件は避けますが、子ども同士が外で遊ぶ時間は、なるべく減らすべきではないと思っています。(後藤太輔)

 ■自然に走り回れる時間作り 保育園

 横浜市港南区のつばさ保育園には0~5歳の幼児約100人が通います。月、木曜に園庭で行う運動遊びでは、サッカーボールやフラフープ、フライングディスクなどを使い、子どもが自然と走り回れるような時間をつくっています。

 保育園を運営するNPO法人きずなの会の大井和子理事長(60)は、緊急事態宣言が明けた後の子どもたちの様子をこう振り返ります。「明らかに体力が落ちていました。片道20分の公園に外遊びに行っても、歩き方がぐだぐだ。苦もなく往復できるはずの5歳児まで『疲れた』と言っていたくらいです」

 今、公園での外遊びは以前より減らしているといいます。「遊具の消毒作業に追われて子どもをしっかりと見守れず、かえって遊びが制限されてしまうので」

 室内遊びを含め、幼児に「密にならないで」「なるべく離れて」と言っても、もとより無理な話。

 「感染防止にウェートをかけすぎると、育ちを妨げてしまいます。保護者の方々も、子どもに思い切り遊んでもらいたいという思いは強い。大人の配慮で、感染対策と育ちの支えを両立させていくことが大切だと思います」

 ■近隣住民へ配慮、公園を転々 放課後児童クラブ

 きずなの会は、小学生を対象にした放課後児童クラブとサッカー中心の地域スポーツクラブ・FCゴールも運営します。児童クラブを担当する清水貴史さん(30)は、子どもたちが自然と密を避け、遊びようが変わったといいます。

 「トランプをするにしても、テーブルを大勢で囲み、自分の順番を待ちながらわいわいやる姿はなくなりました」。外遊びも一輪車やキャッチボールなどが中心に。体が触れあう鬼ごっこや、互いの距離が近くなるドッジボールをするようになったのは、秋以降だそうです。

 悩ましいのは、外遊びの公園をどうするか。近隣住民への気遣いが、より必要になっているからです。「在宅勤務の方が増え、いつも騒がしくするのも悪い。色々な公園を転々としています」

 FCゴールは現在は週3回の練習をしていますが、3月から7月上旬まで休会しました。その間、コーチの吉田昂司(たかし)さん(29)が近隣の公園を回ると、1人でボールを蹴っている会員の子もいて、マンツーマンで練習をしたそうです。

 今年度の登録者は3月までと比べ10人ほど減りました。「1年生の入会促進ができず、人が集まるところは避けたいという家庭もあります」

 吉田さんは保護者の考え方について、心配の度合いが高い層と、心配しすぎては何もできないと感じる層の二極化を感じると言います。「サッカーは体の接触なくして成り立たない。参加するかどうかは、選択してもらうしかありません。活動中のマスクは自由にしています」(編集委員・中小路徹)

 ■減る会員、会費値上げも検討 地域スポーツクラブ

 愛知県刈谷市の総合型地域スポーツクラブ「朝日総合スポーツクラブ」は、子どもから高齢者まで約30のプログラムを提供しています。

 チアダンスの教室には、幼稚園や小学生の女児36人が通っています。感染防止のために窓は開け、子どもたちはマスクをつけ、練習に励んでいます。「こんな時期だけど、元気よく踊ろう」。11月、講師の磯貝みゆきさん(62)が子どもたちに語りかけました。小学3年の鈴木茜里さん(9)は「ダンスが楽しみ」と言います。しかし、祭りやイベントの中止で、毎年10回ほどあったダンスの発表の場がなくなってしまいました。

 新型コロナウイルスの影響で、会員は昨年度の507人から391人に減り、そのうち中学生以下は143人から92人に減りました。

 山口博子事務局長(71)は、「毎年の予算は約300万円で、例年は数万円の黒字だった。今年は会費の収入が減り、100万円の赤字になる。貯金を崩すしかない」と悩んでいます。

 例えば、受講生は社交ダンスが4人、バドミントンは2、3人になっています。クラブは、受講生の少ない教室の休止や会費の値上げを検討しています。山口事務局長は「赤字の教室はやめていくしかない。行政が援助してくれれば、地域の人たちがみんなスポーツを楽しめるのに」と話しています。(木村健一)

 ■落ちた体力、活動は試行錯誤 スポーツ少年団

 群馬県高崎市の新町SVCスポーツ少年団は毎週日曜、市内の小学校で、小中学生十数人が柔軟体操や体の様々な部位を使うサーキットトレーニング、球技を楽しみます。

 運営するNPO法人新町スポーツクラブ理事長の小出利一さんは、「体力低下がはっきり数字で表れた」と言います。例えば、40メートル走のタイムを中断前の2月と7月を比較すると、

 6秒77→7秒21(小6男子)

 7秒17→7秒74(小5女子)

 6秒97→7秒27(小5男子)

ほぼ全員のタイムが落ちました。その後、戻りつつありますが、負荷をかけた運動後に測定するとガクッと落ちるそうです。「まだ、その程度の体力ということ。2月までは毎回、負荷をかけたトレーニング後の測定値でしたから」

 クラブの活動は試行錯誤です。巣ごもりの3カ月間、子どもたちはほとんど歩いていませんでした。けがを避けるため、再開後も1カ月半は、トレーニングで両足ジャンプや、ケンケンは控えました。

 そして、「巣ごもりの影響を甘く見てはいけません」と警鐘を鳴らします。再開後、別のドッジボールクラブにも入っている小学生の動きがおかしいことに気づき、聞くと、「ひざが痛い」という答えでした。試合に出たいがために、痛みを誰にも言えなかったのでした。小出さんはひざに負担がかからないような個別のメニューを示しました。

 「今も何らかの無理を抱えたままスポーツをしている子は少なくないのでは。指導者が子どもたちの動きを注視し続ける必要があります」(編集委員・中小路徹)

 ■親子で一緒に活動→幼児の歩数増 順天堂大・花王が調査

 コロナ下での親子の歩数に着目した調査があります。順天堂大と花王の研究グループは緊急事態宣言下の5月、首都圏在住の幼児(1~5歳)と保護者の41組94人に、歩数計を装着してもらって実施しました。

 調査結果によると、1日の平均歩数は3~5歳が6702歩。複数の先行研究の事例と比べ、2~6割減っていました=図。外出しなかった日は、外出した日に比べて1~2歳で3割、3~5歳で4割少なくなりました。

 保護者の歩数が多いグループと少ないグループに分けると、多い方が1~2歳の歩数も多くなりました。親子で活動することが幼児の活動量を増やすと推測できます。

 調査に携わった順大の内藤久士教授(運動生理学)は「感染に気をつけながら散歩や遊びをした親子の活動量は落ちていなかった」と指摘します。

 内藤教授が今、懸念するのは「感染予防を意識するあまり、小さな子どもたちが一緒になって遊ぶことを(保護者が)否定してしまうこと」です。群れて遊ぶことが、発達や人間関係の構築において重要な役割を果たしているからだと言います。

 そこで、ちょっとした工夫を施した外遊びを内藤教授は勧めます。例えば「だるまさんが転んだ」なら、鬼役にタッチする代わりに、鬼役の半径2メートルの線を踏むことにする、などです。

 日本スポーツ協会の「アクティブ・チャイルド・プログラム」のサイトでは、「3密」を避けた様々な外遊びを提案しています。内藤教授は「感染の予防に配慮して、子どもたちが群れて遊べる機会を確保することが大切」と話しています。(木村健一)

 ◇来週27日も「外遊びできてる?」を掲載します。

 ◇フォーラム面へのご感想ご提案をasahi_forum@asahi.comメールするでお待ちしています。

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